訪日外国人観光客が日本で楽しみたいことの一つに食事があります。
外国人に人気のある日本の食事といえば寿司や天ぷら、懐石料理等が頭に浮かぶ他、ラーメン等も高い人気を誇っています。
そんな中、日本を代表する食材、和牛の人気が高まっています。海外での和牛ブームと背景について見ていきましょう。
牛肉の輸出が過去最高を記録
世界的なブランドとなっている和牛ですが、財務省が発表した統計によると、2017年の牛肉の輸出量は2,707トンと前年比41.8%増となり、7年連続の過去最高を更新しました。 2018年はオーストラリアが日本の牛肉輸入を17年ぶりに再開する見通しもあり、更なる需要の拡大が見込まれています。
米国向け輸出は異例の出荷ペース
地域別の日本産牛肉の輸出数量は香港の792トン、カンボジアの544トンに続き、米国の373トンがトップ3を占めますが、2017年に16年ぶりに日本からの牛肉の輸入を解禁した台湾が211トンと現地での高級和牛ブームを裏付ける結果を残しています。 2018年に入ってからは米国向けの牛肉輸出が好調で、4月上旬で既に200トンを超え、異例のハイペースとなっていることから、年間を通しての販売拡大が予想されています。
政府主導での輸出促進策が実を結ぶ
2001年のBSE感染症問題、2010年と口蹄疫問題によって和牛の生産が減少するとともに日本からの輸入を制限する国が出る等、2000年代以降は日本産牛肉にとっては不遇の時代でしたが、政府や食肉販売会社等が海外で行ったプロモーションが結実したのが近年の海外における和牛ブームと言えるのではないでしょうか。 2016年5月、「農林水産業・地域の活力創造本部」で取りまとめられた、「農林水産業の輸出力強化戦略」の中で掲げられた農林水産物・食品の輸出額の目標は2019年までに1兆円とされており、牛肉は重点品目の1つとしてこれまで以上の輸出拡大とそれに向けた取り組みが求められています。
Wagyuと和牛の差別化
100年以上に渡る品種改良の結果生まれた和牛ですが、柔らかい肉質と脂肪が入ったいわゆる霜降りが特徴で、両親ともに和牛であることが条件です。 しかし1990年代にアメリカやオーストラリアに和牛を流出させてしまった業者がいたため、和牛の遺伝子を用いた外国産Wagyu生産が世界に広まっています。 しかし、高品質な和牛の生産は品種の管理、適切な飼料配合、細かい体調管理が必須であり、遺伝子だけで同じ品質は実現できず、日本人の得意分野である職人的なこだわりがベースになると言われています。また、さらに優れた和牛を目指す品種改良も継続的に続けられています。 このような畜産農家の努力もありますが、政府も高い品質を活かした販促活動、和牛の格付け情報等を7か国語で各国に提供する、海外のシェフや小売業者に向けた和牛の良さのアピール等の市場開拓と需要創出策で和牛の輸出拡大を後押ししています。
インバウンド需要も和牛プロモーションに貢献
年々増加している訪日外国人観光客を介した和牛のプロモーションも行われています。 インバウンド層にとって窓口として機能する各国際空港で、すき焼きセット等を販売するアンテナショップを展開するといった取り組みを行っています。 外国人観光客が帰国後にも和牛を楽しめるようにする機会を創出し、世界中で滞在中に楽しんだ和牛の食べ方を楽しむ機会を作ることで現地での需要拡大に貢献できるのでは、という試みですが、和牛の良さを海外に伝えるとともに、日本への再訪のきっかけにとしても期待できそうですね。