6月18日朝に大阪を襲った大阪北部地震ですが、最大震度は6弱を記録し、6月21日時点で死者5人、負傷者370人を超える被害が出ています。
マスターカードの発表した「急成長渡航先ランキング」で2年連続世界一に輝いた大阪には、昨年1111万人もの訪日外国人が訪れていますが、今回の地震が大阪に限らずインバウンド全体に水を差してしまう可能性があります。
大阪府全体の経済活動が低下
前回の記事の通り、西日本の玄関口の役割を果たす関西国際空港では交通機関が不通となり、多くの人々が足止めを余儀なくされました。 地震の規模や被害状況、交通機関の復旧等の情報を求めて外国人観光客が旅行口コミサイトに多数の書き込みがあったということから、有事の際の多言語による迅速な情報提供が必要であり、今回の関空においては充分とは言えなかったことが類推できます。 また、関空と大阪市内を結ぶ南海電鉄は通訳アプリ等をインストールした案内用タブレットを28駅に設置していますが、今回の地震で外国人観光客への情報提供に活用されており、タブレットや翻訳端末を活用しての多言語対応の一つのモデルになるのではないでしょうか?
正確かつ素早い情報を多言語で提供する
災害時の情報提供は正確さが重要ですが、同時に素早く提供されることも被災者の安心感にもつながり、重要度が高いとされます。
政府提供、災害時情報提供アプリ「Safety Tips」
日本政府観光局(JNTO)が外国人観光客が安心して日本を旅行することができるようにと2014年10月からリリースしている災害時情報提供アプリが「Safety Tips」です。 日本政府が提供しているという安心感もあり、大阪北部地震の発生後に各種SNSを通してこのアプリの存在が拡散されました。現状、日本語・英語・韓国語、中国語(繁体字・簡体字)の5言語に対応しています。
50万ダウンロード超える「NHK WORLD TV」
しかし、外国人にとって災害時の情報入手手段として頼りにされているのは実は「NHK WORLD TV」アプリです。Google Playでのダウンロード数は50万を超えていて、「Safety Tips」やその他の外国人向けの防災アプリとは桁が違う実績です。 防災アプリは有事の際に改めて必要性が認識される等、被災した後にダウンロードされる、ということがありますが、「NHK WORLD TV」は災害を目的としたものではなく、日本に滞在している間に参照し、様々な情報を得るという目的で多くの人々に利用されています。
情報の拡散にSNSを利用する
前回の記事で大阪観光局の防災への取組みを「大阪防災ネット」や「大阪コールセンター」の事例で紹介しましたが、将来起こるかもしれない災害を想定して準備されていた多言語対応のウェブサイトや大阪北部地震での初動対応の速さ等、非常にレベルの高い対応が行われていました。 しかし、これらのウェブサイトは基本的には観光情報の案内を目的としたウェブサイト、「OSAKA-INFO」から地震についての発表としてリンクが貼られ、それぞれのサイトで出来ることが紹介されているという作りになっていました。 そのため、「OSAKA-INFO」の存在は知っていても地震の後に観光情報サイトで現在の状況を確認できるとは考えなかった観光客が多く、せっかくの情報が伝わりにくかったことがSNS等で「大阪防災ネット」や「大阪コールセンター」についての情報があまり拡散されなかったことから伺い知れます。 前述した「Safety Tips」も同様ですが、まず存在を知られていなければそこにたどり着くのが難しく、準備されていたとしても活用されない可能性が高いのです。 災害が発生した際にはツイッターやFacebook、中国ではWeibo等で情報収集をする人が多いことから、このようなSNSとの連携を強化することも必要ではないでしょうか。
初動対応マニュアル策定ガイドラインの運用強化
災害時に問題となる可能性があるのが宿泊施設の対応です。交通インフラ等については都市部を中心に多言語対応が進められていますが、地方ではまだまだというところが多く、旅館やホテル等の宿泊施設も然りというのが現状です。 民泊新法の施行で宿泊施設の在り方にも変化が見えていますが、外国人観光客が長い時間を過ごす宿泊施設でも災害時の初動対応をきちんと行えるような取り組みを観光庁が中心となって今一度推進する必要があるでしょう。