2013年6月の世界文化遺産登録以降、国内外からの注目がさらに集まるようになった富士山ですが、増加を続けるインバウンド人口に伴い外国人登山者も増加すると見られています。
そこで富士山でのインバウンド対策の動向や今後の課題について、確認していきましょう。
富士山を登る外国人観光客は増加傾向
富士山全体の登山者数は2016年が年間24万5675人、2017年が28万4862人となっており、20万~30万人の間で推移していますが、環境省や山梨県が実態把握を目的として2015年、2016年に実施したサンプリング調査によると、2016年の推定登山者数は約3万6000~4万人で、全体の14.4~16.6%を占めていることがわかりました。 その他、五合目総合管理センターに設置されている通訳案内の対応件数は2014年度は8,035人、2015年度は1万4228人、2016年度は1万5223人、2017年度は9922人となっており、富士山を訪れる外国人登山者数は増加傾向と言って良いでしょう。
富士山で行われている主なインバウンド対策
このような状況を踏まえて考えると外国人登山者に向けた配慮や登山をより楽しむためのサービスの提供が必要ですが、現在実施されているインバウンド対策の主な事例を挙げてみました。
無料Wi-Fiサービス
都市部であれば外国人観光客が持参したWi-Fiルーターでインターネットを利用することができますが、山間部等では電波が届かず使用できない、ということは良くあることです。 かつては富士山もそうでしたが、2016年7月10日から「富士山 Wi-Fi」が全ての山小屋を含む49か所で無料で提供されており、登山中の様子や景観をSNSで共有したい、というようなニーズに応えています。
「男前証明書」、「べっぴん証明書」
富士登山をする人々の中にはその景観を楽しみにわざわざ海外からやってきた、という人が少なくありません。しかし、富士山に限らず自然の景観は天候次第というところがあり、美しい姿を見ることができなかったということも考えられます。 そのような残念な事態を少しでも満足に変えようと考案されたのが「男前証明書」、「べっぴん証明書」です。 悪天候で富士山を見ることができなかった場合に配布されるこの証明書ですが、「今日は日本一の美女である富士山が恥ずかしがって姿を隠してしまった。ここにあなたが男前(またはべっぴん)であることを証明する」という文章と美しい富士山の写真が掲載されていて、そのユーモアが心を和ませてくれます。
多言語対応他課題も散見
まだまだ足りない多言語対応
このようなインバウンド対応が進められている一方、課題も残されています。 まず、多言語対応です。日本政府観光局(JNTO)が2017年4月に実施した調査によると、吉田ルートの山小屋21軒のうち、英語が話せるスタッフがいるのは8軒、ウェブサイトの英語版があるのも8軒、英語でネット予約ができるのは5軒だけというさびしい結果となっています。
富士山協力金の低い認知度
また、富士山では保全・保護を目的とした「富士山協力金(1000円)」を登山者から任意で集めていますが、日本人登山者の91%が事前に知っていたのに対し、外国人登山者は30%に留まり、実際に協力金を支払ったという人も50%を切るという結果になりました。 協力金の存在を周知するとともに使途等をわかりやすく理解できるようにするなど、外国人登山者からも協力金に対して賛同を得られるようにする工夫の必要性を指摘する声もあります。
まとめ
整った施設や登りやすさで富士山を登った外国人観光客の満足度は高いと言われていますが、まだまだ伸びしろが残されているようですね。