訪日外国人観光客の移動手段として新幹線やJR、各地の私鉄等がそれぞれのインバウンド対策を実施していますが、今回はバス会社のインバウンド対策を見ていきましょう。
混雑の緩和が必要なケースや利便性向上を狙ったケース、業界の抱える問題にも目を向けることでインバウンド人口の受け皿としてどのようなことが必要なのかを考えてみます。
外国人で溢れる有名観光地・京都の事情
インバウンドによる混雑
初めて訪日する外国人のほとんどが訪れる京都ですが、市営バスの年間旅客数が急増しています。 2013年から2016年までの3年間の増加を見ると1億1883万人から1億3233万人と1350万人も増えており、特に京都駅発着で金閣寺や繁華街を経由し、外国人観光客の利用が多く、なおかつ大学、高校の需要が多い205号系統等、特定の路線は市民の日常に影響が出るレベルで混雑しています。
京都のバスの対策
①1日の本数を増加、深夜も
そこで京都市交通局は大学の通学輸送に対応するため、多くの臨時便を運行したり、深夜に京都駅~金閣寺道~烏丸北大路間を走る運行ダイヤも用意、205号系統を1日300本運行することで対策をしています。
②地下鉄・バス1日券の値下げでバスの混雑緩和
このようなバスの混雑を受け、京都市交通局は市営地下鉄全線と市営バス全線、京都バスおよび京阪バス(一部路線は対象外)が乗り放題となる「地下鉄・バス1日券」を1200円で販売していましたが、2018年3月から900円に値下げすることで混雑緩和を図っています。 5月2日時点では「地下鉄・バス1日券」の購入数は増加しているという京都市交通局のコメントから、これからバス混雑の緩和策として成果が出てくるのではないでしょうか。
地方での取り組み・徳島の場合
外国人向けに路線バス乗り放題を提供
徳島県と徳島県バス協会は徳島市内の路線バスが2日間乗り放題となる、外国人観光客向けの乗車券「TOKUSHIMA BUS PASS」の販売を2018年7月1日から始めました。 これは四国では初の試みとなりますが、市内の観光地や四国八十八カ所霊場を訪ねる際の利便性向上を狙いとしています。 購入する際にパスポートの提示が必要ですが、1500円で高速バス以外の全路線が乗り放題となり、市内の観光地の魅力を隈なく楽しめそうです。
観光バスのインバウンド事情
リピーターのニーズは地方
インバウンド人口が増加している中、訪日外国人観光客の消費動向は爆買いに代表されるモノ消費から、日本ならではの体験そのものに価値を見出すコト消費へと移行していると言われています。 特に訪日が2度目、3度目となる訪日リピーター層はゴールデンルートに代表されるメジャーな観光地ではなく、地方の観光地を落ち着いて楽しみたい、というニーズがあります。
観光バスの本数を増やせない理由
そこで地方へ送客ができる手段として観光バスが最適、ということになるのですが、観光バス業界はドライバーの不足に悩まされています。
①大型2種の免許取得者の減少
観光バスを運転するためには大型2種免許が必要ですが、大型2種免許を取得する人は減少しています。
②バス業界の給与水準が低い
また、バス業界は給与が低いことが多いため、大型2種の免許を取って観光バスのドライバーになりたい、というインセンティブが働きにくいことがさらに悪循環を発生させているようです。
ドライバー増加のための解決策必須
観光バスに対するインバウンド需要はありますが、その需要に応えるためにはドライバーが必要です。しかし、限られたドライバーを酷使することは運行の安全性に影響が出る可能性があり、事実過去に高速バスで事故が相次ぎ、ドライバーの労働時間の適切な管理等がバス会社に向けて求められたという経緯があります。
まとめ
都市部でのバス
日本の国内移動の際の交通費は高いと言われる中、バスは移動手段として重要な役割を果たしています。 日本が継続的にインバウンド人口を確保し、観光立国として振舞うためには、バスに限らず公共交通機関の充実が絶対条件です。
地方での観光バス
今回取り上げたバス業界について言えば、働き手にとって魅力的だと思えるような待遇になるように改善する等、ドライバーをきちんと確保しつつきちんと収益を上げられるような業界全体や社会全体を巻き込んだ仕組み作りが必要なのではないでしょうか。