訪日外国人観光客が心をときめかせる日本文化の代表とも言えるのが着物です。
買い物を中心としたモノ消費から日本ならではの体験に価値を見出すコト消費へとインバウンド消費が変化している中、着付けサービスや着物レンタルの現在を確認しましょう。
着物・呉服業界の市場規模
着物・呉服卸販売はやや減少傾向
着物は日本の伝統文化ですが、矢野経済研究所の調べによると着物・呉服の2016年時点での市場規模は小売りで言うと2785億円となり、前年比では0・7%の減少です。 これは2014年以降継続的に微減していることになり、将来を楽観視しにくい状態です。 観光地における着物のレンタル、着付けといったサービスは特に新しいものではありませんが、インバウンド向けの新たな需要が着物文化や着物の活用を改めて捉えなおすきっかけになればと業界も期待をしています。
着物・浴衣を体験するインバウンドは増加傾向
京都観光総合調査が2016年に行った調査によると、「着物・浴衣」の着付けやレンタルを体験した外国人旅行者は欧米を中心に前年比2~6ポイントの伸びを示しています。 兵庫県豊岡市では、着物の着付けサービスを実施している旅館が人気を博しており、着物の販売増にも結び付くような結果が出ているといいます。
最近の着物関連サービス
中国大手旅行サイトで着物体験を販売
かつては爆買いという流行語を生みだした中国からの訪日観光客ですが、消費がコト消費にシフトしたとはいえ、その旺盛な消費を見逃すことはできません。 着付け教室などを運営する日本和装ホールディングスは、中国最大手の通販サイト運営等で知られるアリババグループが運営する旅行サイト「Fliggy(フリギー)」で、着物体験のアクティビティ販売を開始しました。 サービスの内容は正絹の着物・振袖の着付けとヘアメイクがセットとなり、全工程を通訳ガイドがサポートすることで利用客の利便性を確保します。
なぜ中国人に着物体験がウケるのか
中国には中国の伝統衣装やチャイナドレス、ドラマや映画のコスプレ等をして写真を撮ってもらう変身写真という文化があり、多くの人がカジュアルに楽しんでいることから、日本で着物姿を楽しめるこのアクティビティは多くの中国人観光客の興味を引きそうです。
ムスリム向けの着付けが人気
中国人に向けた対応を見てみましたが、奈良市に本社を構え、着物販売やフォトスタジオ事業を展開する京ろまんは奈良市内の「わぷらす奈良」でムスリム対応の着付けサービスを行っています。
イスラム教徒でも安心
イスラム教では女性は肌を見せてはいけない、という戒律があることから、頭から首部分を覆うスカーフ「ヒジャブ」を身に着ける必要があります。 京ろまんでは着物を通じて世界に日本文化を発信していきたいという思いから、日本を訪れるゲストの多様性への対応の一つとしてムスリム対応の着付けサービスを始めました。
着付けだけではないムスリム特化
古い着物からリメイクしたヒジャブをセットにしたムスリム対応の着付けサービスを提供するとともに、ハラル対応の小料理店・美tsuiや、”高速餅つき”の実演が人気の和菓子店「中谷堂」と連携する等、着付けだけにとどまらないムスリムに特化した奈良散策プランを提案しています。
まとめ
日本人でも着物を着たことがないという人が多い昨今ですが、残していくべき日本文化の一つであることは間違いないところですね。 夏になれば浴衣のレンタルが提案できそうですし、伝統的な着物から映画やアニメ等の和装といったコスプレ色が強い着物もプロモーション次第で人気を呼べそうです。 今回紹介したムスリム対応の事例や中国向けの販売戦略等から見ると、コト消費として深堀する余地が大きく残っていそうな着物レンタルサービス事情ですね。