訪日外国人観光客によるインバウンド消費のうち、大きな割合を占めているのが宿泊費用です。
インバウンド人口の急増によりゴールデンルート他有名スポット周辺を中心に宿泊施設の不足が懸念されていますが、ホテル・旅館経営業者はインバウンドによってどのような収益を上げているのでしょうか?
2016年度は4兆9012億円の収入高
インバウンド増の恩恵を受け、全国のホテル、旅館は好調です。 2018年4月の帝国データバンクの発表によれば、2016年度のホテル・旅館経営業者の収入高の合計は4兆9012億円となり、過去10年間で最高を記録しました。 これで5年連続で前年度を上回ったことになり、増加する訪日外国人観光客によってホテルや旅館の稼働率が上がったことが理由とされています。
地域、業歴別でのデータ
地域別
地域別で収入高を見てみると、「近畿」が33.1%と、全体で最も大きい伸びを示し、インバウンド消費の伸びの大きさを伺わせる一方、「東北」や「北陸」は減収の構成比が高い結果となっています。
業歴別
これを業歴で見てみると、増収となったのは業歴10年未満の38.2%、減収は業歴100年以上の27.5%が最も高いという結果でした。 帝国データバンクの指摘によると、業歴が長くなると事業を多角化するケースが多いとされ、宿泊事業以外の事業が落ち込んだホテルや旅館が減収という結果につながっているといいます。
訪日外国人に人気になるホテル・旅館の条件とは?
以前の記事でも触れた通り、外国人にウケそうな 純和風の旅館よりもホテルの方が人気だという事実がありますが、 インバウンド需要を逃さないためのポイントを再確認しましょう。
・食事と宿泊料金を分ける ・食事メニューに多様性を持たせる ・宴会は不要 ・人数貸しではなく部屋貸し ・就寝を促さない ・無料Wi-Fiを設置
これらのポイントを押さえることで外国人観光客にとっては自然な習慣に合わせることができますし、ゲスト側としては日本のおもてなしや旅館といった文化を楽しみながらマイペースで観光を楽しむことができます。
大手企業の取組み
2020年にインバウンド人口4000万人を目指している日本ですが、宿泊施設の不足が懸念されています。受け皿として期待されていた民泊についても2018年6月15日の民泊新法施行がかえって逆風になっているような事態です。
そんな中、京阪ホールディングス(HD)は2018年度から3年間の中期経営計画と2026年度を目標と設定した長期経営戦略を発表しました。
中期計画では、京都を重点投資先として位置付け、JR京都駅近くに建設中の「ザ・サウザンドホテルキョウト」他、同駅周辺に3ホテルを新規開業する等、インバウンド向け事業をさらに推進する方針です。
さらに大阪や沿線外地域も含めた商業施設やホテル開発を中心とした投資を今後3年間で1千億円程度行い、収益拡大を目指すといいます。
まとめ
このように好況といえる一方、民泊新法施行後に届出を行った業者との集客競争がどうなるか等、民泊の行く末が不透明なことや従業員不足、施設の老朽化など業歴の長い事業者特有の問題も今後解消していく必要があり、簡単な取り組みとは言えません。 今後も増加が予想されるインバウンドの受け皿としてホテル・旅館経営業者の挑戦はまだまだ続きます。