全国各地の迷惑な風習
①忍野八海はコイン投げ入れで水質が悪化
富士山は世界文化遺産に登録されていますが、その構成資産のひとつに八つの池からなる「忍野八海(おしのはっかい)」があります。 環境省の名水百選にも選ばれている押しの八海ですが、そのうちの一つ、涌池は観光客が投げ入れるコインによって水質が悪化し、景観を損ねる問題にさらされています。 2013年に富士山が世界文化遺産に登録されると外国人も含めた観光客が増加し、コインの数もさらに増えたといい、ダイバーによってコインを回収する作業を余儀なくされています。
②京都・嵐山の竹林に落書き
古の都の風情を楽しむことができる京都ですが、中でも嵐山の竹林は見るものを圧倒する美しさで知られ、世界中から観光客が訪れています。 しかし、この竹に名前やイニシャルを刻みつける行為が相次ぎ、貴重な資産が損なわれています。 竹林を管理する『えびす屋嵐山』はFacebookを通して竹林を傷つけないようにと呼びかけをしていますが、被害は100本以上の竹にのぼっています。
③厳島神社の大鳥居にコインをはめ込む観光客が
世界遺産に登録されている広島・厳島神社は海中にそびえたつ姿が印象的ですが、干潮時には根元まで露わになります。 この大鳥居、1875年に再建された8代目となっており、劣化が進んでおり補修工事が検討されていますが、この支柱の亀裂に無数のコインがはめ込まれ、亀裂を更に悪化させるなど世界遺産へのダメージを与える行為として問題になっています。 賽銭と同じ感覚で行われていると推察されるこの行為ですが、いつから始まったものかはっきりしていないものの、20年前には既に行われていたといいます。
改善方法は?
このような観光資源そのものの存続に影響がある迷惑な行為をやめさせる、現実的な改善方法はないのでしょうか? 今回紹介した事例でも注意を促す立て札を立てる、監視カメラを設置することで自制を促す等といった施策案が検討されていますが、景観を損ねる可能性がある等、実施には至っていません。 また、厳島神社の場合は立て札を立てた場合、満潮時には立て札が海中に浸り、劣化が予想されることから現実的な対策として採用が難しいという状況です。 さらに、京都東山のケースでは入林申請を観光客にしてもらう、という案も出ているといいますが、観光客の足を遠のかせる要因になる可能性もあります。 いずれにしても観光地としての魅力を維持してなおかつこのような風習を辞めさせる決定的な改善策は今のところなさそうです。
まとめ
今回紹介した事例以外にも日本全国で同様の被害が起きていることが予想されます。 これらの全てが外国人観光客だけによるものではなく、今回の事例でも20年前には既に行われていたという報告もあることから日本人観光客がそのベースを作ってしまっている可能性も否めません。 しかし、インバウンド人口の増加に伴い被害が深刻化していることも事実です。海外に向けてこのような行為が存在していることを発信したり、パンフレットに景観保護を訴えるメッセージを多言語で掲載するなど、何等かの対応を積極的に進める必要がありそうですね。