インバウンド人口4000万人実現に向けて諸方面で様々なプロモーションや施策が行われていますが、2020年に控える東京オリンピック・パラリンピックには1000万人もの観光客が訪れると言われています。
宿泊施設の不足は以前から問題視されていましたが、オリンピック開催期間中は1万室が不足するという声もあるほど深刻な問題となっています。
ホテルシップが宿泊施設不足を解決?
そこで宿泊施設不足問題を解決する一手として注目を集めているのがホテルシップです。 ホテルシップとは超大型のクルーズ船をホテルの代わりとして港に停泊させて利用することを指しています。 ホテルシップの停泊場所としては東京港、川崎港、横浜港、木更津港が予定されていますが、今回はまず東京港と横浜港に停泊が予定されているホテルシップを見てみましょう。
東京都は豪華クルーズ船・MSCリリカをホテルシップに
東京都は東京港に停泊するホテルシップの運営事業者として、欧州最大手の船会社、「MSCクルーズ」を選出しています。 ホテルシップとして利用される予定の客船・「MSCリリカ」は全長274メートル、客室数992室、乗客定員は2679人の大型船で、高級ホテル並みの豪華な装備を備えています。
横浜港には豪華客船「サン・プリンセス」が停泊
横浜港に目を向けてみると、JTBが豪華客船「サン・プリンセス」をチャーターし、山下ふ頭に停泊を予定しています。 サン・プリンセスは客室数が1011室、全長261メートルと東京港に停泊予定のMSCリリカに引けを取らない大型豪華客船で、2000人以上が宿泊可能です。 宿泊費用はサン・プリンセスの場合、2泊3日のプランで1人あたり7万円台~60万円台になりそうです。
ホテルシップによる効果は絶大
このように宿泊施設としても大きな働きをしそうなホテルシップですが、それ以外にも期待されている効果があります。
ホテルシップ内の施設を活かした旅行プランの提供
元々長い期間のクルーズのために作られたクルーズ船にはたくさんの娯楽施設があり、レジャー施設としても魅力的です。 オリンピック観戦に加えてホテルシップでも様々な娯楽を楽しむことが出来る点は訴求効果が高く、付加価値の高い旅行商品が発売されることになるでしょう。
オリンピック後には本来の客船に戻ることができる
オリンピック期間中の宿泊需要はいわば特需であり、オリンピック需要に合わせてホテルを建設したとしても 開催期間が終わった後には稼働率がぐっと下がってしまう、という事情は過去のオリンピックの事例からも予想に難くありません。 その点、ホテルシップは高需要に合わせて停泊し、需要が落ち着いた時点で本来のクルーズ船として運用することができるという点でも効率が良いと言えます。
課題は旅館業法と入管法
ホテルシップの実現には旅館業法が問題とされていました。 旅館業法では窓のない部屋は換気ができない、衛生面で問題があるとされ設置できないとされていましたが、ホテルシップの場合は客室によっては窓がないこともあります。 しかし政府もホテルシップには大きな期待を寄せており、2017年6月から内閣官房で検討を開始、2018年5月に「当該イベント期間に限り各自治体の判断により営業許可を与えて差し支えない」と厚生労働省から通知が出されました。 また、外国人乗組員の上陸日数の上限が7日間であり、オリンピック開催期間より短いという問題もありますが、これらの課題は2018年中にガイドラインがまとめられる見通しとなっています。
まとめ
実は1964年の東京オリンピックでは横浜港に5隻のホテルシップが接岸し、大変な賑わいを見せたという実績がある他、バンクーバー、ロンドン等、各オリンピックの会期中にもホテルシップが活躍しています。 豪華な総合レジャー施設でもあるホテルシップ、外国人観光客のみならず機会があればぜひ泊まってみたいものですね。
参考:
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12180-073778/
http://starresort.co.jp/hotel-supplement/news/18031301/