北九州の観光地、といえば福岡県や長崎県がまず思い浮かびますが、佐賀県を訪れるタイ人観光客が急増しています。
2013年には370人だったタイからの宿泊観光客数は2015年にはなんと10倍以上となる4,680人まで増加し、さらに増加を続けています。
タイ人観光客が急増する佐賀県
きっかけとなったのはタイの映画「タイムライン」のロケ地として名乗りを上げ、誘致に成功したことです。この 映画は祐徳稲荷神社、波戸岬、呼子等が舞台となっており、2014年の公開後、興行収入で5位にランクインする大ヒット作となりました。 この映画を見たタイ人がロケ地を訪れるいわゆる聖地巡礼のために佐賀県を訪れるようになった、というわけです。 佐賀県もこのチャンスを活かすためにロケ地を紹介する冊子を制作し、現地でのプロモーションを積極的に行う等の働きかけをした結果がタイにおける佐賀人気という形で結実したという事例です。
アジア各国で大人気!「君の名は。」
日本やアジアだけではなく、世界中での大ヒットが記憶に新しい「君の名は。」ですが、劇中での舞台となった岐阜県飛騨市や東京都新宿区周辺、キービジュアルのロケ地と言われる新宿区の「四谷須賀神社」等が聖地巡礼の対象となっています。 映画の公開後となる2017年の春節に飛騨市を訪れた外国人観光客の内訳について飛騨市商工観光部観光課の統計を見てみると、公開時期が早かった台湾人の218人を始め、中国人が134人、香港人が134人と目立ちますが、その他にもシンガポール、タイ、韓国、マレーシア等アジア圏からの訪日観光客が多いことがわかります。 映画の誘致を積極的に行った佐賀県と違い、岐阜県の場合は積極的にロケ地として誘致に動いたわけではありませんが、海外から直接アクセス可能な交通手段がない等のインバウンド上の不利を克服するべく、官民一体となったインバウンドへの取組みを以前から積極的に行っていたからこそ、映画のヒットに対してすぐに反応することができ、インバウンド層の受け入れ準備等をしっかり行うことができたという事実があります。 映画のヒットに単純に便乗した、というレベルではないということも併せて理解しておく必要があります。
スラムダンク、ジブリ作品等、多くのアニメが巡礼地に
他にも「スラムダンク」の聖地として神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄・鎌倉高校駅や「千と千尋の神隠し」の道後温泉、「となりのトトロ」の所沢市等、スタジオジブリ作品もその多くを聖地として訪ねる訪日外国人観光客が後を絶えません。
まとめ
佐賀県の事例のように映画のロケ地となることでプロモーション効果を狙う「ロケツーリズム」は上手くいくとインバウンド増を見込めることがわかりました。 また、日本のアニメは海外で人気が高く、人気作品の舞台には多くのファンが聖地巡礼として訪れています。 しかし、地元を舞台としたアニメがヒットして多くの外国人観光客が訪れるようになったとしても、受け入れ側が「聖地」であることの自覚がなく、突然増えた外国人観光客に対して困惑してしまう、という話も少なくありません。 チャンスを活かすためには受け入れ側として作品とのタイアップはもちろん、ロケ地の案内をきちんと行ったり、現地でしか購入できない公式グッズの企画や作品中に登場する食べ物やグッズの再現等、積極的な働きかけをしたりすることによって地元で消費がしっかりと発生するようにする必要があります。 そのためにはアンテナを常に貼りつつ、チャンスを逃さないように自治体と一体となった素早い動きが必要になるでしょう。