医療現場での急速なインバウンド対応

インバウンド増によって対応を迫られる分野は多岐に渡りますが、中でも健康や生命に関わる医療分野での対応は特に急務とされています。
訪日外国人観光客が医療行為を必要としたとき、スムーズな処置を受けることができるのか、また平行して発生している医療費未払い問題への対策は進んでいるのか等、医療におけるインバウンド対応の現状を見ていくことにします。

多言語対応の医療相談アプリ

2018年8月に発表された日本発の多言語医療相談アプリ、UrDoc(以下ユアドク)は在留外国人や訪日外国人を対象としてオンラインによる医療相談サービスの提供を開始しました。
ユアドクでは下記のようなことが可能になります。

事前予約不要でリアルタイム相談

オンラインでユアドクに登録している医師の中から相談したい医師を選び、動画やテキスト、音声等で医療相談を行うことができます。
選択された医師は相談の内容に対してリアルタイムに対応することができます。

医師は6言語・30人でスタート

2018年8月のスタート段階では医師30人が登録されており、英語、中国語、韓国語、マレー語、ドイツ語等6言語に対応しています。
2019年には100人、2020人には300人の医師の参加を予定しており、対応言語も更に増える予定です。

この他最寄りの外国人受け入れ可能な医療機関や最寄りの薬局を地図に自動表示する等の機能を備えています。

インバウンド関連学部、看護設立

医療の現場での多言語対応は切実な問題となっていますが、医療におけるグローバル人材を育成する試みがスタートしています。
国際看護学部を開設したのは大手前大学です。

この学部では看護師国家試験受験資格に加えて、グローバルコミュニケーション能力を育成する科目を設置し、卒業時に全員が日本医学英語検定試験4級合格を目標に、経年的に医療英語を学ぶことができます。
教員には現場経験の長い看護師はもちろん、外国籍の教員、海外での看護師免許や学位を取得した教員、1年以上の外国滞在経験を有する教員などが在籍し、医療や多国籍文化の実態を元に実践的な教育が行われます。

医療未払い問題

厚生労働省が行った2015年度の調査で訪日外国人や在留外国人に「未収金がある」と回答した病院は全国約1300の救急病院のうち、486病院に登ることが分かりました。

外国人による医療費未払い問題は日本に限った話ではなく、各国ともに対応に苦慮しているのが現実です。
代表的な観光立国であるフランスでは各国領事館を通じて未払い医療費を請求していますが、回収率は悪いといいます。
イギリスでは2017年から医療行為を受ける場合は原則的に医療費を前払いとする他、一定の未収金があると入国禁止にする制度を設けて対策を行っています。
日本政府もイギリスに近い仕組みで、医療費未払い履歴のある外国人リストを元に入国審査の段階で再入国を拒否する仕組みが可能かどうか検討中となっています。

旅行保険の加入促進を徹底すべき

2017年度に観光庁が行った調査によると、旅行中の病気やけがで病院に行く必要を感じたという旅行者からの回答が1.5%ありましたが、実際には旅行者のうち27%が旅行保険には加入していませんでした。
この点を踏まえて政府では訪日外国人観光客に対して旅行保険の加入を促すために海外で発行されるガイドブックや在外公館でチラシを配布するなどの呼びかけを行っています。

まとめ

医療の現場では症状や状態を説明する繊細で高度や語学力が必要となりますので、多言語対応といっても一朝一夕でなし得るものではありません。
以前の記事でも触れましたが、長期的な人材育成の仕組み作りだけではなく、従事者を適正に評価する賃金体系の確立等、その分野を志す人材が増えるような社会体制作りも要求されるのではないでしょうか?
また、医療費未払問題のしわ寄せが医療機関や国民に来るようであれば将来をインバウンドに活路を求める、という方針が指示を得ることは難しくなるでしょう。
各国の事例を参考にしながら実効性のある対策が求められています。