【イベントレポート】第二回これからの奈良を考えるフォーラム

イベント概要と開催趣旨

人口減少による国内市場のシュリンクという状況に直面することになる日本ですが、インバウンド需要の獲得による観光立国化が問題解決の一つの姿として挙げられています。

インバウンド人口はここ数年過去最高を更新しながら増加していますが、地方創生の大きなカギとなるインバウンドをどのようにして誘致するのか、具体的な動きが必要になってきました。

今回は2018年2月に開催し好評だった「これからの奈良を考えるフォーラム」の続きとして、「インバウンド観光」をテーマに様々なジャンルでご活躍の講師の方々に登壇していただくことになりました。
日本でも指折りの観光県・奈良県の現状やインバウンドを誘致する際に課題となる点等、また奈良県の魅力とはどこにあるのか、といった点を参加者の皆様と共に考える、というのがフォーラム開催の趣旨となっています。

詳しい概要はこちらです。

4人の講師による講演の概要

当日は弊社代表を含む4人の講師による講演が行われました。
講師を務めた4名はそれぞれに違う立場で観光やインバウンド誘致、プロモーションに関わっているところから、同じく奈良県とインバウンドをテーマとしながら、それぞれの視点からの意見を聞くことができました。
それぞれの講演の概要については下記のような内容となりました。

①なぜインバウンドがテーマなのか?

まず主催者挨拶を兼ねまして弊社・株式会社アドリンク代表取締役を務める上治太紀が登壇いたしました。

日本は東京オリンピックを控える2020年にインバウンド人口4000万を目標として掲げてきましたが、ここ数年の増加具合を見ると数字としては実現できそうだとした上で、ここ最近のインバウンドの流れを語りました。2014年頃にはインバウンド向け施策といえば外国語メニューの準備等の基礎的な多言語対応がほとんどで、インバウンド誘致のニーズもゴールデンルートにしかなかったところが、現在は多種多様な外国人が日本各地を訪れ、これまでとは全く違った状況になっているとし、インバウンドを受け入れる側の対応もより具体的かつ詳細なものが必要となっていることを紹介しました。

また、インバウンド人口を国別で見ると数が最も多いのは中国人だが、消費額で見るとオーストラリア人が最も多いという事例から、インバウンド誘致といってもターゲットによって全く違ったアプローチが必要となるため、漠然とインバウンド対策ということではなく、よりターゲットを明確にした対策が重要だとしました。

②奈良の活性化について 観光のストーリー作りを現地リソースと共働で実現

続いて公益社団法人まちづくり国際交流センター理事長 吉田浩巳氏が登壇し、在留外国人への日本語教育や子供たちへの教育支援、外国人講師の派遣等様々な支援活動を通して見えてくる風景をシェアしていただきました。

奈良県の観光における問題として挙げられたのが、観光資源が多く訪問地も多いが宿泊地は大阪や京都になってしまうという点です。これによって「消費が奈良県に落ちにくい」という指摘には参加者も大きく同意していました。

また、訪問先が奈良市に集中している点についても問題だとした吉田氏は、日本には文化財のようなわかりやすい観光資源に恵まれていなくても知恵と工夫で集客を成功させている地域があるのに、奈良県の場合は文化財が新たに発見された際の説明会に参加するのは県外の人が多く、現地の人間は興味を示していないという具体例を示し、その原因として観光県でありながら修学旅行需要に支えられてきたことによる危機感の無さを指摘していました。

吉田氏はインバウンドの根源的な動機として「非日常との出会いだ」とし、文化財や食が豊富な奈良はこれらをアピールしていく必要があるとしました。
一例として奈良の歴史を反映した歴史通り、サイクルツーリズムの誘致のために利便性向上の仕組みを用意したサイクリングロード等、観光のストーリー作りを地元企業、ボランティアや地元住民といったリソースとの「共働」によって取り組んでいく必要性があると紹介し、ご自身の経験から共働を実現する際のポイントについてもシェアをしていただきました。

③インバウンドプロモーションの現場から〜消費はモノ・コトから意味へ〜

ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)関西支部事務局次長 福村和広氏はプロモーションの最前線に立つ立場から奈良県がどのようなアプローチでプロモーションを行うべきか、という講演をしていただきました。

大阪市を中心とした100㎞圏内に京都、大阪、奈良、和歌山等多数の観光資源が集中している関西エリアについて諸外国と比較しても世界的に特殊であり、優位性があるとした上で、100㎞という距離は地元生活者にとって遠い距離だが、外国からやってきた旅行者にとっては近いという、旅行者目線での認識を元に物事を考えることが重要だとしています。旅行サイトの人気スポットランキングが日本人と外国人で全く違う結果になる点や渋谷スクランブル交差点、瀬戸内海、長野のサル温泉等が外国人観光客によって発見され、一般化した事例に大きくうなずく参加者が多数いたことが印象的です。

また、インバウンドというと話題になる民泊について、本質は現地の人と同じ生活を味わってみたいというところにあり、日本人にとっての日常が観光客にとっては非日常。全国どこでも観光資源として成立すると紹介してくれました。
同じ視点で言えば自分達の日常の仕事の風景や商店街の営みも観光資源になり得るとしましたが、大阪商工会議所のマニュアルを例に黒門市場がインバウンドに配慮して行った食べ歩きが可能な量、写真撮影OKにするなどのすり合わせの必要性についても重要性を訴えました。

福村氏はインバウンドの消費はモノからコトへ移行していると言われるが、さらに興味はコトの先にある“意味”へ向いている、と語り、コトが成立した意味や歴史をきちんと認識し、それをきちんと説明できるようにし、
豊富な観光資源を活かしてきちんとアウトプットしていくことが奈良県のあるべきアプローチと締めくくりました。

④奈良県民による魅力の再認識

最後に奈良県まちづくり推進局幹線街路整備事務所長 竹田博康氏が講演、奈良県のインバウンド活性化には奈良県民による地元の魅力の再認識が必要だとしています。

「京都のおいでやす」という文化に対して「大仏さんと鹿しかない奈良」とする奈良県の奥ゆかしさが情報発信力の弱さの一因となっているのでは?という指摘には参加者一同心当たりがある様子で顔を見合わせて納得の表情を見せる一幕もありました。

また、京都との比較で言うと京セラや任天堂等、世界的大企業が多い京都に対して経営規模の大きい地場企業が少ない奈良は協力を得ることが難しいという側面もあるとしていました。

奈良県の観光全体を見ると宿泊数は日本全国で最下位になるけれど対象を外国人だけに限定すると10位にランクインする、というデータについて触れ、外国人の宿泊は現状誘致できており、伸びしろもあると見ることができるのでは?という視点が提示され、宿泊客を確保することができれば飲食を含めた消費増が見込めるとして、中国人富裕層をターゲットにした場合の旅館等宿泊施設がどうあるべきかという事例が挙げられました。
いずれにしても奈良県は見どころを地元奈良県民が再認識・整理し、情報発信力を高めていく必要がありそうです。

ワークショップでは熱い議論が

それぞれの視点から提示された奈良県の課題と可能性を踏まえ、ワークショップでは様々な業種からの参加者がそれぞれの意見を持ち寄り、奈良県の観光の将来について熱く議論を行いました。
普段は考えたことのない異業種からの意見は新鮮に響き、新たな発見に自由闊達な意見交換が行われました。

懇親会も活発な話があちこちで

その後行われた懇親会では地元の料理に舌鼓を打ちながら、参加者同士の交流が行われ、業務においても新たな人脈や繋がりが出来たという感想を多数聞くことができました。

総評

奈良県では2度目となるインバウンドフォーラムでしたが、立場の違う講師の方々から共通して聞けたのは「情報発信の重要性」というキーワードでした。

奈良県の場合、観光資源が豊富でそれが地元の人にとっては日常となっているからこそ、それを自分達が魅力として気づくことが出来ておらず、結果として情報発信が弱くなってしまう、という指摘は参加者の多くにとって響くもので、講演での指摘があった後に行われたワークショップでは「私達にとっての日常を外国人視点で捉え、価値を再発見する」というようなアプローチを実践しよう、という積極的な空気が生まれていました。

また、単なるセミナーではなく、ワークショップで参加者同士が意見を交換し、交流できる機会は中々ないので、第3回、第4回のフォーラムにもぜひ参加したい、という嬉しい意見をいただくことができました。