2020年に4000万人というインバウンド目標を実現するべく、ビザ発給要件の緩和やより安価な旅行ツアーの開発等が行われています。
外国人目線で見た場合、訪日旅行のハードルは下がったわけですが、結果として不法滞在する外国人が急増しています。
今回は不法滞在につながる事例とその対策について見ていきます。
船舶観光上陸許可制度を悪用
2015年1月にインバウンド増を目的として導入された船舶観光上陸許可制度は、指定の船舶で来日し、許可を得た乗客は寄港地1か所につき7日以内に帰船する条件でビザや顔写真の撮影をせずに入国できる制度です。 制度開始から2018年6月までに660万人が利用したことからインバウンド増に貢献していると言える同制度ですが、合計171人が失踪しています。 長崎県警外事課によると、失踪者は2015年11人、2016年8人、2017年10人、2018年は9月末時点で既に24人と年々増加しています。
対策に力を入れる法務省
法務省は2018年7月に対策として失踪者が相次いだクルーズ船1隻を対象に、同制度による指定を更新しない措置を取る他、乗客名簿の確認を徹底、失踪者を出した船会社に再発防止の指導を行っています。
空港での退去命令は年間3000人以上
島国である日本の国境といえば空港等の入国審査場になりますが、入国目的が申請内容と異なり、法律違反を犯す可能性がある、と入国審査官が判断した場合、その場で退去命令を下すことができます。 1年で3000人以上が退去命令の対象になっていると言いますが、中には毎日神奈川から大阪を往復して観光するという中国人男性、大量の段ボール箱に高級ブランドの違法コピー商品を詰めて持ち込むベトナム人男性等、違法性の高いビジネスに関わっているケースも少なくありません。
退去強制等を受けると一定期間入国できない
入国管理法は日本から不法残留等を理由として退去強制された者や出国命令を受けて出国した者はに対して一定期間の上陸拒否期間を設定しており、その間は日本に上陸することはできませんが、これによって治安悪化の可能性を防ぐという取り組みをしています。
木津川河川敷に点在するヤミ畑
日本に滞在する外国人による違法行為には様々なものがありますが、京都府内の一級河川、木津川沿いの河川敷のヤミ畑の事例を見てみましょう。 ヤミ畑とは国有地のような国の管理下にある場所に無許可で作られた畑を指しています。 木津川は国土交通省が管理しており、河川区域内は国有地であり、ヤミ畑は河川法違反となります。 しかし木津川の河川敷にはヤミ畑が多数点在し、問題となっています。
中国人夫婦が耕す300㎡のヤミ畑
中でも特に目立つのが広さ300㎡の土地に10種類以上の野菜を栽培しているヤミ畑。 物置や耕運機等の作業環境も充実しているこの畑は中国人夫婦が持ち主となっており、管轄する近畿地方整備局・淀川河川事務所が中国語で畑の撤去を求める看板を立てる等の勧告を行っているが、聞く耳を持たずお手上げ状態だといいます。
まとめ
法務省入国管理局は平成16年から平成20年までの間、「不法滞在者5年半減計画」に基づく総合的な施策を実施し、22万人であった不法残留者は平成20年時点で11.3万人となり、5年間で48.5パーセントの不法残留者の削減という成果を上げています。 しかし、インバウンド増の施策に乗じて不法滞在者が増加することは治安の維持にとって良いことではありません。 今回紹介したヤミ畑のケース等、法を無視した形で滞在している外国人に対してはより厳格な対応が求められています。