インバウンド増に伴う課題は様々な分野から持ち上がっていますが、宿泊施設の不足は重要度の高い課題とされています。
課題を解決する受け皿として期待を集めているのが民泊ですが、2018年6月15日に民泊新法が施行されました。
今回は施行後1か月半の実績データを見ていくことにします。
民泊新法施行後の届出住宅数は?
2018年6月15日に施行された住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法ですが、新法に沿って届け出を行うことで旅行者を有料で宿泊させることができるようになります。 宿泊日数の上限が年180日という決まりがあるため、民泊新法以前から民泊営業を行ってきた事業者の中には届出をためらうケースが少なくありません。 そのような中、施行から1か月半が経過した7月31日時点の届け出住宅数は5510軒となっています。
6月15日~7月31日までの宿泊実績
民泊新法では届出住宅は2か月ごとに宿泊日数等を自治体に報告する義務があります。 そこで観光庁が発表した民泊新法登録事業者の実績データを見てみましょう。
1軒当たりの宿泊日数
届出住宅1件あたりの宿泊日数は13.5日となり、集計期間が47日なので稼働率は28.7%と3割を下回る結果でした。 宿泊利用者の8割が訪日外国人観光客で、宿泊利用者1人あたりの平均泊数は2.4泊でした。 今回の報告率は届出住宅の約92%と高い数字でしたが、宿泊実績が0日、という事業者が3割あったといいます。
都道府県別の宿泊日数
1位:東京都(届出住宅 1811軒) 2万7851日
2位:北海道(届出住宅 1022軒)1万7552日
3位:大阪府(届出住宅 346軒) 4414日
4位:愛知県(届出住宅 189軒) 3099日
5位:福岡県(届出住宅 256軒) 2918日
宿泊日数を都道府県別に見てみると、届出住宅数が多い都道府県が宿泊日数も高い数値となっています。
1軒当たりの宿泊日数
1位:北海道 17.2日
2位:愛知県 16.4日
3位:東京都 15.4日
4位:神奈川県 14.0日
5位:沖縄県 13.2日
届出住宅1軒当たりの宿泊日数は上記のようになります。 届出住宅数が最も多いのは1811軒の東京都なので、単純に考えると東京都が1位になりそうですが、実際には届出住宅数1022軒の北海道が1位に入りました。 これは宿泊人数が多い場合や宿泊日数が長いと日数が多くなりますので、北海道の場合はこのような影響があるのではないでしょうか。
届出数の伸び悩み
民泊新法施行後初めての集計データですが、稼働率がそれほど高くない、という結果もさることながら、届出住宅が少ないということが気になります。 民泊大手サイト、Airbnbに登録されていた民泊施設は2018年春の時点では6万を超えていましたが、民泊施行直前からAirbnbが違法物件の削除を行った結果、7月時点では2万4千まで減少しています。 この数字から見ると届出住宅数はもっと増えても良さそうですが、数字の乖離が大きいことから違法なまま民泊営業を続けるいわゆる「闇民泊」化が進んでいる可能性も指摘されています。
まとめ
民泊新法によって法整備がなされたことで法人が民泊に参入するという流れも本格化しそうですが、民泊がゲストにとって人気だったのは宿泊料金が安いという点にあり、外国人観光客の訪日需要の一端を担っていた可能性があるのであれば新法施行後の民泊施設減とそれに伴う宿泊料金の値上がりは旅行先としての日本の魅力を少なからず削いでしまう可能性も考えられます。 以降の同データの推移には注視しておく必要がありそうですね。