大会初のベスト8入りを果たすなど、日本代表の躍進もあって大きな盛り上がりを見せる「ラグビー ワールドカップ 2019 日本大会」。
日本代表は南アフリカと準々決勝で対戦、惜しくも破れましたがまだ大会は続いています。
この大会を通して日本が見せたおもてなしについて、いくつかの事例を見ていきましょう
全国各地で試合が開催されるラグビーW杯
ラグビーワールドカップの特徴として2つを上げることができます。 まず1つ目は開催期間が1か月半と長いことです。そして2つ目は全国各地で試合が開催されることです。 世界中から熱狂的なラグビーファンが訪日し、試合を観戦するために試合開催地となる地方を訪れ、長期滞在するラグビー東京を中心としたエリアに限定される東京五輪と違って、前述のように日本の各地で試合が開催されるラグビーワールドカップはインバウンド誘致による地方創生を目指す日本としても恰好の機会と言えます。
外国語スキルにこだわらず集めたボランティアは1万3千人
各地での試合を始め、大会で直接ラグビーファンと接しているが組織委員会が集めたボランティアです。今回集められたボランティアは1万3千人におよんでいますが、外国語のスキルについては応募の必須条件としなかったことが多くの応募を集めることができた要因の一つのようです。 条件としては日本語の読み書き、日本語でのコミュニケーションを挙げたことから日本語が出来る外国人ボランティアが約250名が参加、会場でのインフォメーションや各国メディア対応などが予想される場所には外国人ボランティアや多言語対応スタッフが多く配置されるなど、スタッフの適正を活かした運用が行われています。
釜石では県を挙げてのおもてなしが好評
試合開催地の一つ、岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムでは9月25日にフィージー対ウルグアイ戦が行われましたが、東北の名産品や名物料理を振舞うテントやキッチンカーなど、飲食ブースは42にも及びました。 試合を行ったウルグアイにちなんだ牛肉料理、シェラスコやインバウンド向けに提供されたフィッシュ&チップスも人気を集めていたと大会関係者は語っています。 同地域は東日本大震災の被災地でもあり、インバウンドや海外メディアに対して震災からの復興を印象付けたいという想いもあったことから、他の地域以上に熱のこもった取組みとなったようです。
サムライを模した多言語対応アイコンを無償提供
取組みは飲食関係の工夫に留まりません。温泉施設や飲食店など、インバウンドに注意を促す必要があると想定される場面ごとのアイコンを温泉施設、飲食店向けなど104種類を制作し、各施設が自由にダウンロードして使用できる環境を整えていました。 ラグビーの町、釜石市を訪れたラグビーファンの得た満足感や地元住民、ボランティアスタッフとの間に生まれた一体感は残念ながら台風の影響で中止となった10月13日のナミビア対カナダ戦の後、カナダ代表が釜石に残って台風の被害からの復旧作業をボランティアとして手伝った、というエピソードからも伺い知ることができます。
試合会場への飲食物持ち込み禁止が問題に
成功と言えるエピソードだけではありません。 ラグビーワールドカップ2019では試合会場への飲食物持ち込みは禁止となっていましたが、9月21日に日本対ロシアの開幕戦が行われた調布市の東京スタジアムでは試合開始一時間前には大半の飲食販売ブースで売り切れてしまうという事態が発生、混乱が生じてしまいました。 その後、組織委員会は個人消費可能な量の食べ物の持ち込みと水筒の持ち込みは容認するという柔軟な対応を見せ、以降は目立った問題は発生していません。 迅速な対応を評価できる一方、消費予測が甘いという言い方も出来るこの事例ですが来年に控える東京オリンピックにおいても原則的に飲食物の持ち込みは不可と予想されている中、対応について参考となるのではないでしょうか?
まとめ
今回はラグビーワールドカップにおける釜石市と飲食物持ち込みについての事例を見てみましたが、その他の試合会場となった地域でも意欲的な取組みが行われ、試合を行った代表チームやファンを多いに楽しませています。 ビッグイベントをきっかけにして地元の魅力をインバウンドに伝達し、リピーター化する、という試みは短期的に成果を求めるものではないため、今後も継続的な訴求が必要ですが、インバウンドによる地域創生のお手本のような事例ですね。