インバウンド数が順調に増加をしている中、消費額の伸び悩みが話題になりつつあります。そんな中、インバウンド数の4分の1を占め、インバウンド消費の35%を占めている中国で海外で購入した商品の転売を規制する新EC法が2019年1月から施行されました。
今回は新EC法の内容とインバウンド消費への影響を確認していきます。
中国政府が新EC法を施行すると困るのは転売業者
今年1月に中国電子商取引法(新EC法)が施行されましたが、これは個人、法人を問わず海外で購入した商品を転売する者が規制の対象となりますが、営業許可証の取得や納税が義務付けられており、脱税時には刑事責任が問われる他、販売された商品が偽物の場合には販売者だけではなくプラットフォームの運営会社も責任を問われるという非常に厳しいものになっています。
中国で転売ビジネスが大きな規模で成立する理由
中国ではタオバオのようなECサイトはもちろん、微信のようなSNS上でも多数の転売業者が海外から購入した商品を転売しています。 新EC法の施行によって転売用の商品の購入が減少することが予想されていますが、ニュースになるほどの規模で転売ビジネスが行われているわけです。 では、なぜこのような転売業者のビジネスが成立するのでしょうか?
①正規流通品よりも安く買える
インバウンド消費の中で大きな割合を示している化粧品ですが、中国の場合は関税が高いため、中国国内で正規に流通している商品よりも転売商品の方が安く買えるという事情があります。 化粧品に限らず、関税やレートの関係で転売業者から購入した方が安いというのが消費者の購買意欲を刺激しているという側面があります。
②安全性の高い商品、本物の商品を購入できる
中国における転売は2005年あたりから盛んになったと言われていますが、一般化した理由の一つが2008年の中国国産の粉ミルクに毒性があったという事件です。乳幼児いる家庭では粉ミルクを利用したいわけですが、国産品の信頼性が揺らいだため、転売業者から海外製の粉ミルクを購入する、という流れが出来たということがあります。粉ミルクを必要とする人達は紙おむつやベビー用品を必要としますし、子供の健康に関わる商品は品質を重視して選びますので、同様に高い品質が期待できる海外製を一緒に買う、という形で市場が大きくなっていった、という流れです。 また、中国では偽物の商品が流通しているということがあります。訪日中国人観光客が日本に来て百貨店で高額商品を購入したり、ドラッグストアで買い物をする、という背景にはこのような偽物の流通という背景があります。要するに、日本で買えば絶対本物を購入できる、というわけです。 中国のECサイトでも偽物商品の販売について管理が進んできていますが、まだまだ偽物商品についての疑心暗鬼は強く残っています。 そこで転売業者は日本で間違いなく購入した本物です、というセールストークで本物を購入したい消費者に販売するということになります。
まとめ
このように新EC法は非常に厳格に運用されているため、転売業者としてもビジネスとしてはリスクが高く、見切りを付けざるを得ないという状況になっており、それがインバウンド消費の減少という結果に繋がると考えられます。 これまで転売業者が積極的に売っていたために特にプロモーションをした覚えがないのに売れていた、という商品がかなりあるはずですが、今後はメーカーとして自力でプロモーションをする必要があると思われます。 新EC法の影響は既に出ていると言われていますが、春節休暇のインバウンド消費にどのような影響があったのか、それ次第では政府の消費額目標を含めて大きく軌道修正に迫られることになるかもしれません。