インバウンドが訪日旅行を楽しむためには移動をどうするか、という問題があります。
単純に移動の便利さだけを考えればタクシーという手段がありますが、料金が割高な点に加え、土地勘がなく日本語が話せないインバウンドにとってはドライバーとのコミュニケーションが難しい、といった利用しにくい要因が存在しています。
今回は中でも最もハードルが高いと思われるタクシー料金についての取組みについて見てみましょう。
タクシー会社のインバウンド対応への取組
インバウンド対応においてタクシーに求められているのは主に下記のような分野です。
①多言語対応
②決済手段の多様化
③運賃が高い、わかりにくい
それぞれについて各社が取組みを行っており、過去にも何度かタクシー会社のインバウンド対応についての記事を掲載していますが、 ①の多言語対応については外国人ドライバーや外国語を話せるドライバーの雇用、またはAI翻訳機の導入などを挙げることができます。 ②の決済手段についてはタブレットを使ったQRコード決済が主流となり、インバウンドに現金以外のキャッシュレス決済手段を提供するという形が進められています。 インバウンドに限らずタクシーを利用する際に気になるのはやはり料金ですが、この分野についても新たな取組みが始まっています。
乗車前に料金が確定、安心してタクシーを利用できる
京都で11月15日から始まったのが目的地までのタクシー料金を乗車前に確定するというサービスです。 一般的にはタクシー料金は時間と距離を併用して計算されるので、渋滞時にはタクシー料金はあがりますが、乗車前に金額が確定していれば安心してタクシーを利用することができます。 このサービスはスマートフォンの配車アプリから目的地を入力して利用する形になるため、インバウンドとのコミュニケーションが難しく目的地がはっきりしない、というような事態も回避することができ、ドライバーの負担も軽減することができます。
近距離をお得に利用できる「ちょい乗り」運賃が普及中
タクシーには初乗り料金があるため、短い距離の移動は割高となり利用しにくいことがありますが、この短い距離へのタクシー需要を喚起する「ちょい乗り」運賃の導入が各地で進められています。 ちょい乗り運賃は初乗りとなる距離を短くする代わりに初乗り料金を低く設定するというもので、インバウンド需要の他にも体の不自由な人やお年寄りにもニーズが見込めるとしていますが、既に東京都区部や京都府南部で成果が出ていることから千葉県や埼玉県、神奈川県、栃木県などでもちょい乗り運賃導入に向けて各社が申請を行っています。
まとめ
ちょい乗り料金の導入は近距離のタクシー利用を喚起できる可能性がある反面、長距離の移動の場合には逆に割高になるため、地域によっては逆に客離れを招くことも考えられます。 タクシー業界全体としてはドライバーの高齢化などによるドライバー不足の問題や将来的に自動運転が実用化された場合の対応など課題が多く、今回のちょい乗り料金もそのような危機感の表れということが言えるでしょう。 今後もタクシー業界の動きには注目する価値がありそうですね。