インバウンド向けのコンテンツとして日本ならではの体験を提供するいわゆるコト消費ですが、農林水産省は「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」という活動を通して農村や漁村へインバウンド需要を喚起する取組みを行っています。
今回は新たに6地域が認定されたSAVOR JAPANについて見ていきます。
そもそも農泊とは?
農泊については過去記事『地方に人を!「農泊」はコト消費の本命になり得るか?』他で何度か取り上げていますが、農村や漁村に宿泊し、生活体験をすることを差しています。 1992年のグリーンツーリズムがその源流と言えますが、個人旅行やインバウンドをターゲットにする動きが出てきたのは2016年度あたりからで、この年には1126万人が農泊を宿泊利用しており、市場は拡大しています。
農泊が注目を集める理由
一般的に観光開発を行うためには観光資源が必要ですが、農泊の場合は農家での生活がそのまま観光資源になる、という点が農泊に注目が集まった理由の一つです。 京都や都市部などにインバウンドが集中する状態から地方送客を行うことで分散、地方での消費を推進したい政府の思惑とインバウンド集客をしたい地方の思惑が一致していると言えます。
食と食文化が中心の「SAVOR JAPAN」
インバウンドから見た訪日旅行の人気コンテンツの一つは食事です。 海外での日本食・食文化に対する関心は高まっており、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたり、ミラノ国際博覧会等の機会に日本食に触れ、実際に「本場の日本食」を体験したいというニーズが生まれています。 そこで地域の食と、それを生み出す農林水産業を中心にインバウンドを中心とした観光客の誘致を図る地域での取組みを認定する制度が平成28年度に創設された「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」です。
農林水産大臣が認定、「SAVOR JAPAN」ブランドとして海外に向けてPR
「SAVOR JAPAN」は農泊を推進する地域の中から、特に食と食文化によるインバウンド誘致を図っている地域の取り組みが対象で農林水産大臣が認定、その地域の食の魅力を「SAVOR JAPAN」ブランドとして海外に向けてPRすることでインバウンド需要を農山漁村に呼び込もうとする試みですが、今年度は下記の6地域が認定されました。
・長野県小諸市 一般社団法人こもろ観光局
・長野県山ノ内町 山ノ内町グリーン
・ツーリズム協議会・愛知県南知多町 南知多農泊推進協議会
・鳥取県・兵庫県 因幡
・但馬地域 (一社)麒麟のまち観光局
・愛媛県八幡浜市 (一社)八幡浜市ふるさと観光公社
・長崎県島原半島地域 (一社)島原半島観光連盟
まとめ
「SAVOR JAPAN」は日本の食を軸にした農泊のブランド化です。認定地域は国のPRが期待できるほか、インバウンド需要の獲得に有利と言えますが、農泊が普段の生活がコンテンツと言えども多言語対応等を含めた課題が存在しています。 また、農泊ブームを一過性のものにしないためにもインバウンドに対して各地域のなにが響くのか、ニーズを理解した上での整備やプロモーションを主体的に行う必要があるのは言うまでもありません。 現在21地域が認定されている「SAVOR JAPAN」ですが、今後の動向にも注目です。