インバウンド増に伴い、宿泊施設の不足が懸念されている中、受け皿のひとつとして民泊が期待を集めていますが、民泊新法が昨年6月に施行されてから営業日数の上限などがハードルとなり、民泊オーナーの中には運営を止めるケースも出ています。
マンションで民泊は管理規約がネック
マンションを活用した民泊物件を運営する場合、マンションの管理規約で民泊が禁止されている場合は原則的に民泊を提供することはできず、分譲マンションの管理組合が民泊容認を決議したのは1%に満たないという報告もあります。 そんな中、新潟県湯沢町にあるリゾートマンション「エンゼルリゾート湯沢」では湯沢町内のリゾートマンションとしては民泊制度導入に関する議案が可決されています。
民泊運営が可能になった背景
エンゼルリゾート湯沢はバブル期のスキーブームを追い風に湯沢町に建てられたリゾートマンションの一つですが、定住者もいるものの原則的に家主不在の物件です。 民泊新法では家主不在の住宅で民泊を行う場合、住宅宿泊管理業者への管理委託を行うことが義務となっていますが、マンション管理組合の総会で住宅宿泊管理業者を同マンションの管理会社・株式会社エンゼルを指定したことで家主不在型民泊事業の事業要件を満たすことができました。 バブル期の負の遺産として語られることが多いリゾートマンションですが、エンゼルリゾート湯沢が民泊物件として運用されることになった背景にはインバウンドによるV字回復があります。
スキーリゾートで沸いた観光の町だった湯沢
1990年、上越新幹線に直結する形で作られた大型スキー場、ガーラ湯沢が開業します。都心からのアクセスに優れたガーラ湯沢はバブル景気、スキーブームの影響もあって開業した2年後には年間820万人のスキー客を集め、約1000万人の観光客が湯沢町に詰めかけました。 この時期に多くのリゾートマンションが湯沢町に建設されたというわけです。 しかし、バブルの崩壊やスキーブームが去ったことで観光客は減少、2010年には210万人とピークの四分の一程度まで落ち込みました。
インバウンドでV字回復
その後、ガーラ湯沢は奇跡的とも言えるV字回復を見せますが、原因は外国人観光客です。 4年程前から外国人観光客が増加し続けているといいますが、アクセスの良さはもちろんですが多言語対応や外国人向けにタイ語、中国語などでのスキーレッスンを行うなど、条件の良さだけに頼らず改善、環境づくりをしているという点も見逃せません。 このようなインバウンドがスキー客として湯沢を訪れることによって宿泊施設の需要が生まれ、持て余されていたリゾートマンションを民泊で活用するというアイディアが生まれ、合意に達したというのが今回の事例です。
まとめ
リゾートマンションに新たな需要が生まれたという今回の事例ですが、定住者が多い住宅地や都心の分譲マンションでは民泊利用に反対するオーナーが多く、民泊運営の同意が得られないということが多いのに対し、リゾートマンションの場合には定住ではなく、文字通りのリゾート目的や投資目的で購入したオーナーが多いことが予想され、民泊物件として運用することに対して同意が得やすかった、という点が特徴的です。 バブル期に建てられたリゾートマンションは全国各地にありますが、エンゼルリゾート湯沢の民泊運営が成功すれば、リゾートマンション再活用のモデルとして扱うことができそうです。