インバウンドが右肩上がりに増加する中、宿泊施設の不足が懸念されています。対策として期待を集めていたのが民泊ですが、民泊を合法化する法律・民泊新法の施工から1年が経過しました。
施行直前、民泊仲介サイトの大手・Airbnbは届出を行っていない物件の削除などの対策を取り、6万2千件と言われていた掲載数は激減しました。
現在、Airbnbに掲載されている案件数は7万3千件を超え、過去最高となっています。
このV字回復の背景にはどのような事情があるのでしょうか?
ホテルや旅館などが2万3千室
民泊新法のネックと言われているのが営業日数の制限。民泊新法では年間の最大営業日数が180日までと定められているため、収益化が難しいと考えた民泊事業者は少なくありません。 現在、Airbnbに登録されている民泊案件の数は7万3千室という発表ですが、そのうち2万3千室がホテルや旅館などの従来からの宿泊施設となっており、残りの5万件がいわゆる民泊物件となっています。
ホテル、旅館との関係構築
民泊新法以前はAirbnbとホテル、旅館業者との関係は良好とは言えませんでした。 これは従来からのホテル、旅館業が厳しい法的条件をクリアした上で営業しているのに対し、民泊事業者はそのような手続きや条件を満たさないまま、ホテルや旅館業社の競合として営業をしていたためで、その窓口となっているAirbnbに対して不快感を示すことは自然な成り行きでしょう。 しかし、民泊新法施行時にそのような未届けの民泊事業者を排除し、法の尊守へとAirbnbが舵を取ったことをきっかけに、敵対関係とみなされていた関係性に変化が訪れた、ということでしょう。
Airbnb、ホテル・旅館業 双方の思惑が一致
民泊仲介サイトのAirbnbとしては登録物件数が減るの問題です。また、届出済の民泊案件の180日までという営業日数の制限はAirbnbにとっても痛手となります。 そこで目を付けたのが営業日数に制限のない、従来からのホテルや旅館業、というわけです。 一方、ホテルや旅館業にとってもAirbnbに部屋を登録することにメリットを見出すことができます。 宿泊予約が旅行予約サイトを経由して行われた場合、手数料として10~15%が発生しますが、Airbnbの場合は3%の手数料で済み、既に外国人観光客が訪日時の宿泊先を探す際に大きなトラフィックを集めているAirbnbに登録することは施策として魅力的です。 ホテルや旅館業の中には宿泊予約サイトの手数料を嫌い、最安保証などを謳い自社サイトからの予約を促すところが少なくありませんでしたが、3%であれば、という動きに対応するためにAirbnbは地方を中心に提携を進めていくといいます。
まとめ
一方、2019年6月の会見で石井交相は民泊新法後の届出は順調に増加している、という認識を示しました。同年5月中旬時点での登録事業者数は1万6588件となっています。 このように民泊新法によって合法的かつ健全に民泊が運営されつつある、という認識も可能ではありますが、都道府県別の届出件数を見る東京都内や大阪、京都など首都圏に集中しており、政府が意図する地方へのインバウンド送客と民泊活用、という方向とはギャップを感じるのが現状です。 今年、来年とビッグイベントを控える日本ですが、民泊事情にも注視していく必要がありそうです。