2018年度は3000万人を超えたインバウンドですが、来年2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控え、4000万人が目標となっています。
今回はインバウンドの訪問地の変化と地方のインバウンド誘致の事例について見ていきます。
地方へのインバウンド送客が進行中?
訪日旅行といえばゴールデンルートがかつては中心でしたが、消費傾向がモノからコトへ移行したと言われる中、地方を訪れるインバウンドが増加しています。 観光庁がまとめた2018年の観光白書によると、2012年と2018年を比較してみましょう。
インバウンドの総数が増えていますので、3大都市圏から地方へ興味の対象が移行した、というよりは地方も訪日旅行の対象になる魅力的なコンテンツがあるということが海外にも知られるようになった、という認識の方が現状にあっているでしょうか。 2018年には3大都市圏のみを訪問した人数の1.4倍の人数が地方部を訪問していることになります。 では、地方へのインバウンド送客に貢献していると考えられる魅力的な観光コンテンツの事例を2つ、見てみましょう。
酒蔵ツーリズムは有力なコンテンツ
日本酒の生産量は年々減少しており、製造業者も1983年の2552社から2016年の1415社へと減少しています。
消費者の嗜好の変化等による消費低迷に苦しむ日本酒業界ですが、 日本酒造組合中央会の発表では2018年の日本酒の輸出量は前年比10%増、 金額では222億3150万円と19%増、9年連続で過去最高を更新しています。 このように海外での認知度が高まりつつある日本酒ですが、2016年に日本産酒類(日本酒、焼酎、泡盛及び日本産のワイン、ビール等)の認知拡大と価値向上、酒蔵と周辺地域の観光振興とその経済的な発展に寄与することを目的として日本酒蔵ツーリズム推進協議会が発足しています。
日本全国に点在している酒蔵と地酒を観光資源と捉えた酒蔵ツーリズムはインバウンドに対して正しい日本酒の楽しみ方を啓蒙しつつ、地方へのインバウンド誘引の大きな動機となりうるコンテンツと言え、各地で酒蔵見学や試飲を楽しむようなイベントが開催されています。
農泊はJAがバックアップ
地方創生とインバウンド、という切り口で良く耳にする農泊ですが、農泊運営をバックアップする体制作りを推進しているのがJAです。 農泊を事業として検討する農家に対してマニュアルの作成、集客やPRの他、備品の供給、運営や登録の代行などを行うことで運営を支援する他、旅行客からの宿泊・農業体験の予約を受け付ける窓口となる「農泊ネット」を設立・運営することで集客も行います。
今後3年程度での収益化を目指すというJAによる農泊バックアップですが、2019年度は山形県と大分県がモデル地区となり、農業体験のイベントなどを実施、関係企業や団体などと「農泊プロジェクトチーム」を設置する見通しになっています。 農泊に興味があるけれどやり方がわからない、運営や営業などに自信がない、という農家が数多くいることが予想される中、JAによるバックアップで運営、集客が実現すれば農泊も魅力的なコンテンツとして認知度が上がりそうですね。
まとめ
地方へのインバウンド送客は政府の方針でもあり、効果的に推進していくことは京都等で問題となっているインバウンドの集中による観光公害の緩和にも有効と考えられます。 今回紹介した2つの観光コンテンツは日本全国、どの地方でも実施が可能なものですが、その地方独特の文化等を見直すことで、オリジナルな観光資源を開発できるかもしれませんね。