多くのインバウンドで賑わう関西ですが、2019年、大阪府堺市の百舌鳥(もず)古墳群がユネスコの世界遺産に新たに登録されました。
今回は新たな観光資源を活かそうとする堺市の試みと昨年世界遺産に登録された長崎市の事例を見てみましょう。
海外クルーズ船の誘致を目指す堺市
「百舌鳥・古市古墳群」が世界文化遺産に登録されたことを受け、堺市は同じく世界遺産・姫路城がある兵庫県姫路市などと協力し、海外クルーズ船の誘致を目指しています。 また、関西観光本部と協調、6つの世界遺産を巡る広域観光ルートをPR、インバウンド誘致を目指します。 クルーズ誘致は瀬戸内海を航行、広島県の厳島神社や原爆ドーム、姫路城、百舌鳥・古市古墳群などの世界遺産を巡るツアーとして海外へPRを行います。
関西観光本部は「美の伝説」を推奨
今回世界遺産に登録された古墳群は関西の主要な観光拠点を結ぶルート、「美の伝説」の一拠点でしたが、ルート内で6件目の世界遺産となり、さらにインバウンドに向けた観光ルートとして推奨していくプランを持っています。
大阪市、京都市への集中緩和
大阪市、京都市といえば多くのインバウンドが訪れていますが、京都市では観光公害の問題が顕在化するなど、関西観光本部ではインバウンドが2都市に集中していることが悩みの種となっています。 そこで、関西10府県から重点エリアを新たに選出、海外に精通した専門家を派遣する等、集客力を高める施策を行なうとのことですが、重点エリアは有識者による審査を経て今年度中に2件を目処に選ぶ予定です。
世界遺産登録から1年、長崎の現状は?
このように盛り上がる堺市ですが、世界遺産に登録された場合、どのような効果が期待できるのでしょうか?2018年7月に世界遺産に登録された長崎県の事例を見てみましょう。 日銀長崎支店の分析によると、長崎県を訪れる外国人観光客はクルーズ船による中国人と対馬を訪れる韓国人が多く、寄港するクルーズ船も日帰り客が中心であることがわかりました。 インバウンドの延べ宿泊者数は横ばいで、この5年間の伸び率は九州・沖縄で最低、全国でもワースト2位となっており、観光資源の豊富さを活かしきれていない現状が浮かんできます。
まとめ
世界遺産に登録されることで認知度の向上は見込まれるものの、それだけでは観光収入増にはつながらない可能性があるということを長崎県の事例は示唆しています。 アクセス経路の整備や宿泊客が増えるような仕掛け等、観光資源を活かした導線作りが必須ですね。