ラグビーワールドカップが9月20日に開幕、日本代表は、1次リーグA組で世界ランキング1位の強豪・アイルランドを19-12で下したものの、準々決勝で惜しくも敗退。しかし、初のベスト8進出という歴史的な快挙を成し遂げました。
今回はラグビーワールドカップで期待される経済効果とインバウンドへの影響について見ていきます。
経済的波及効果約は約4,372億円
夏季オリンピック、サッカーワールドカップに次ぐ世界三大スポーツイベントの一つに数えられているラグビーワールドカップですが、前回大会となるイングランド大会(2015年)のデータを見てみましょう。
・開催期間 : 44日間
・観客数 : 約247万人
・経済効果 : 4000億円
・TV観戦 : 全世界で40億人が観戦
イギリスを訪れた観客のうち、約40万6千人が14日間もイギリスに滞在したと言われています。 これを受けてラグビーワールドカップ2019組織委員会がまとめた大会前の経済効果分析レポートによると経済的波及効果は約4,372億円に上ると期待されています。
いわゆるインバウンドと違う客層?
このように大会期間中に国内外から多くの観客が会場となる都市を訪れることになりますが、観光を目的として訪日している外国人観光客と違い、ラグビーを観戦する、というはっきりした目的があるという点が通常とは違います。 来日したラグビーファンは試合会場となる全国12都市を中心に複数の試合を観戦しながら長期滞在し、各地で観光、消費を行うことになります。 特に注目すべきはラグビー観戦のために初来日する欧米豪のラグビーファンです。 開催地と大会出場国との相互交流を図る絶好の機会になるとともに、各地の観光資源を世界に向けてアピールし、訪日リピーターを育てる、という視点での取組みが理想と言えるでしょう。
消費額が大きいが絶対数が少ない欧米豪を狙える
2018年には3100万人を超えたインバウンドですが、国別の内訳を見ると中国が約4分の1を締め、韓国、台湾、香港といったアジア圏からの訪日客が多いのが現状です。
これらの国からの訪日客はまだ伸びしろが感じられるものの、日韓関係の悪化など、コントロールが難しい問題によって訪日客が減少することも十分に考えられ、特定の国からの訪日客に依存した状態は危険と言えます。 また、2020年のインバウンド消費額の政府目標は8兆円に設定されていますが、そのためには個人の消費額を大きくする必要があります。 その一つの方法と考えられるのが一人当たりの旅行消費額が大きい国々からインバウンド誘致を行うことです。具体的にはオーストラリア(24万2500円)、イタリア(22万4268円)、英国(21万9725円)、フランス(21万5733円)、アメリカ(19万1352円)等が一人当たりの消費額が大きいのですが、これらの国はラグビーワールドカップに出場しますので、多くの観客の訪日が見込めるのです。
ラグビーをきっかけにコト消費でリピーターへ
このようにまさに日本が呼びたい客層がラグビーをきっかけに訪日するわけですが、このチャンスにしっかりと日本の文化、魅力を体験してもらい、訪日リピーターとして2度、3度と来日してもらえるようにする必要があります。 そのためには日本ならでは、地域ならではの体験を提供するコト消費の充実が求められます。地域が官民一体となってそれぞれの観光資源を発見し、磨くことはもちろんですが、ラグビーワールドカップの期間中だけではなく、継続的・長期的な視点でプロモーションを行うことも重要です。 日本代表の活躍もあり、盛り上がりを見せるラグビーワールドカップは11月2日まで続きます。その間にも出来ることをしっかり実施していくことがスポーツイベントを超えた交流を生み出すのではないでしょうか?