2018年は3000万人の大台を超えたインバウンドですが、かつてはゴールデンルートに集中していた訪問地も多様化し、興味は地方へと向かっていると言われています。
以前、観光庁が発表した観光白書を元にインバウンドの現状を探る特集を行いましたが、その際にも地方の取組みについて取り上げました。
今回は別の角度から地方自治体のインバウンド対応について見ていきましょう。
自治体関係者の悩みとは?
今回参照したのは地域活性化地図ソーシャルサービスなどを提供する株式会社モバイルライフジャパンが 全国の自治体従事者に対して行った「自治体関係者の悩みと要望」に関するアンケート調査結果です。
年間で観光案内に使用できる予算
まず、年間で観光案内に使用可能な予算を見てみましょう。
自治体、といっても規模に違いがあるので予算の絶対額で多い、少ないを一概に比較できませんが、予算が100万円未満の自治体が多く、その場合は観光案内として可能な施策はかなり限定されてしまいそうです。
観光案内として実施していること
上記の予算を使って実際に行っている観光案内についての回答は以下の通りです。
多くの地域では紙媒体による対応がメインであるようですが、観光サイトが36%となっており、デジタル化は進んでいるのではないでしょうか?
観光案内のインバウンド対応状況は?
上記で実施している観光案内のうち、インバウンドに対応しているかどうかを質問したところ、下記のような回答になりました。
この結果を額面通りに受け入れると4割以上の自治体がインバウンドに対応していない観光案内を予算を使って行っていることになります。 インバウンド対応した観光案内を行っているという約6割の回答者を対象としてインバウンド対応の内容について複数回答可で質問した結果を見てみましょう。
このように多国語対応が最も多いという結果になり、順当だと思われますが、一方で外国人スタッフの雇用も大きな割合を占めています。この数字は今後さらに大きくなるのではないでしょうか?
予算は十分か?
予算の額についての質問がありましたが、予算として十分かどうか質問しています。
予算が適正であるという回答と十分だという回答を合わせると62.3%になります。 年間の観光予算の額面と回答の相関関係がわかりませんが、意外と多くの自治体が予算には満足しているという結果のようです。
インバウンド含め新しい取組みに意欲は?
インバウンドを含めた新しい取組みに対する意欲について選択式で質問したところ、下記のようになっています。
この部分の回答だけを見ると49.6%と約半数が予算があればやっていきたい=予算がないのでやりたいことができない、という様に見えますが、その前の質問では予算が適正であるという回答と十分だという回答を合わせて62.3%だったことを考えると回答として鵜呑みに出来ない感がありますが、現状維持で十分という回答が12.6%という点を見るとほとんどの自治体が予算があってなおかつ良い施策があれば新しい取組みを行いたい、と思っているようです。
まとめ
今回のアンケートで見えてくるのは、地域紹介冊子、観光サイト、スタンプラリー、観光アプリといったような既に地元を訪れた観光客に向けた観光案内施策のうち、4割の自治体がインバウンド対応をしていない、という実態です。 このようにインバウンド誘致で地方創生、と政府が旗を振っているにも関わらず、実際には対応が出来ていない地域がかなりある上に予算は適性、十分だと6割以上が考えているという点を見ると各自治体の施策そのものの有効性や予算の使い道が適切かどうかなど、今一度検証の必要があると考えさせられる結果となっています。 今回参照したアンケートの方法や設問が妥当かどうかという点も検討が必要ですが、国内のインバウンド対応はまだまだブラッシュアップできる伸びしろがあるという点を明るい材料と捉えたいところですね。