インバウンドの総数は右肩上がりに増加していますが、消費額については政府目標の2020年に8兆円、2030年の15兆円は達成が厳しくなっているのが現状です。
目標達成に向けては1人あたりの消費額を引き上げる必要があるのですが、その一つの方法として考えられるのが富裕層に向けたサービスの展開です。
医療ツーリズム
富裕層向けのサービスとしてまず挙げられるのは人間ドックなどを中心とした医療サービスです。 過去記事(『中国人の医療ツアーが人気?医療ツーリズムの課題と期待』)でも取り上げていますが、医療ツーリズムで訪日する観光客は、金銭的に余裕がある層なのはもちろん、治療と同時に観光も行うことから観光消費額が高くなる傾向があります。 全国9カ所で会員制人間ドック「グランドハイメディッククラブ」を運営しているリゾートトラストは2019年内に中国語圏、英語圏に向けて年間1000人分の販売を予定しています。 医療ツーリズムは検査結果が出るまで滞在する形が一般的なため、会員制リゾートホテルとの相互利用やグループのゴルフ場などで共通して使えるポイント制度を作る他、人間ドックでは語学堪能なスタッフが対応するなどの体制を整え、高度な医療サービスを提供していくというプランです。
城泊体験で富裕層にアピール
インバウンドによる消費のうち、宿泊費用は大きな割合をしめます。富裕層向けの宿泊施設、というといわゆる5つ星ホテルのようなものが思い浮かびますが、東北運輸局はインバウンド誘致に宮城県白石市、地域関係者と連携、城泊を目玉にコンテンツ開発を進めています。 宿泊先となるのは白石城天守で、木造の城としては国内発の試みです。9月24日、25日にはサンマリノ共和国駐日大使のマンリオ・カデロ氏夫妻を招待し、甲冑の着用、居合道など武士時代の生活文化や日本舞踊などの体験を実施しました。 10月5日、6日には欧・米・豪市場をターゲットに海外OTA(オンライン・トラベル・エージェント)や旅行会社を対象とした白石市の歴史・文化・食を体験するモニターツアーも実施し、富裕層に向けて「城泊」の認知を目指しています。
日本三景・松島をヘリコプターで周遊
日本三景として知られる松島の美しい景観をヘリコプターから楽しむ、という観光サービスがスタートしています。このサービスは株式会社インアウトバウンド仙台・松島が始めたもので、定員5名のヘリコプターに外国人通訳ガイドが1名同乗し、松島湾などの上空を遊覧するというものです。 周遊の場合は1時間で75万円と高価なサービスとなっていますが、利用者の要望に応じて柔軟にコースを設定できるほか、二次交通が弱いと言われる東北エリアの周遊観光の促進にも一役買えると同社の西谷社長は期待を寄せています。
まとめ
富裕層向けのサービスの物足りなさについて、主に中国人に関して過去に指摘をしていますが、(https://addd-link.co.jp/2018/7521/)今回紹介した医療ツーリズムや城泊、ヘリコプターによる周遊等は高い水準のサービスや特徴のある体験を提供するという点でこれまでの日本のサービスにありがちな平均点は高いけれど突き抜けてはいないというサービスの傾向とは一線を画すものになる可能性があります。 もちろん誰に、何を、というところがクリアになっている必要はありますが、インバウンド向けの観光資源開発をする上で必要な視点になってくるのではないでしょうか?