2020年の東京オリンピックを間近に控え、都内各地では再開発事業や施設の整備が進められています。オリンピックでは国内外からの選手団や観戦を目的とした訪日客などによる消費拡大が期待されていますが、その反面オリンピックが終わった後の景気失速も懸念されています。
そこで今回は過去のオリンピックの事例から東京オリンピック後の日本を考えてみます。
前回の東京五輪後は?
1964年に行われた東京オリンピックの頃、日本は高度経済成長が始まったばかりでした。新幹線や首都高速だけではなく様々な都市インフラがオリンピックのために突貫工事で進められたという事情もあり、オリンピックが終わると「五輪不況」と呼ばれる状況に陥りました。 しかし、その後すぐに景気は好転、1970年まで続くいざなぎ景気と呼ばれる絶頂期を迎えたのは周知の事実ですね。 今回の東京オリンピック後の景気後退を予想する声は1964年の東京オリンピック前と現在の状況が似ているというところから来ているようです。 しかし、毎年コンスタントにインバウンドが増加している今、東京オリンピックが終わったからといってインバウンドが激減することは考えにくいですし、当時の未開発な東京と違い、オリンピック準備に関連した事業はそこまで景気に大きな影響力を持っていない、というのが実際のところではないでしょうか?
アテネ五輪後のギリシャは経済危機に
オリンピック後に経済危機が訪れた事例として2004年のアテネオリンピック後のギリシャが挙げられます。 ギリシャの経済危機を招いたのは政府の経済運営が失敗したことが原因ですが、その中にはオリンピックに向けて建造された施設が活用されない、いわゆる負の遺産問題があるといいます。 アテネオリンピックに向けてギリシャは新国際空港を建設しましたが、それまでに使用されていた古い空港は特に再開発されるわけでもなく、空港としても使用されないまま放置されました。 このような無駄が積み重なった結果が2010年の経済危機へと繋がっていきました。
ロンドン五輪後の英国、バルセロナ五輪後のスペインは成功事例
一方で、オリンピック後に経済成長を見せた事例として2012年のロンドンオリンピック後の英国、1992年のバルセロナオリンピック後のスペインがあります。 英国を訪れる旅行者はオリンピック前から増加傾向にありましたが、オリンピック以降さらに増加し、景気が後退していた当時のEU各国の中にあって成長を維持することに成功しました。 1992年のバルセロナオリンピック以前のバルセロナは衰退傾向にありましたが、オリンピックをきっかけに現在のような観光都市として生まれ変わることに成功しました。 いまでは世界有数の観光都市として多くの観光客がバルセロナを訪れています。 いずれのケースも政府がオリンピック後の景気の維持、持続を目指してしっかりとした取組みを見せており、ギリシャのように無策だとオリンピック期間中の一時的な好景気に終わってしまい、その後に経済が失速する可能性があるということになります。
まとめ
オリンピック後に景気が後退した事例を見ると準備に関連した特需の反動や施設の無駄などが理由の一つになりますが、政府は12月5日の閣議決定で総事業規模26兆円にのぼる総合経済対策を打ち出し、そのうちのひとつとして「五輪後を見据えた経済活力の維持向上」を挙げていることから、オリンピックによる景気を一過性のものにしないための施策を準備することで一時的な失速はあってもある程度の水準の維持は期待できそうです。 インバウンド、という視点で見た場合には東京オリンピックをきっかけにメディアを通して東京、日本の魅力を発信することができますし、観客として訪日したインバウンドをリピーター化、日本製品の購入・使用から帰国後も継続して購入をするいわゆる「帰国後消費」まで含めると十分すぎるきっかけと言えます。 バルセロナやロンドンなど、成功事例に倣ってさらなるインバウンド増、経済成長を狙うチャンスが訪れています。