爆買いは終わった? それとも…?
2015年の流行語にも選ばれた「爆買い」ですが、2016年4月に中国政府が関税の引き上げと円高により、爆買いは収束したと思われていました。
しかし、この爆買いがV字回復してるような記事が2017年4月4日にあがっていました。
阪急阪神百貨店など主要百貨店4社が3日発表した3月の売上高(速報値)は、阪急うめだ本店(メンズ館含む)が前年同月比3.1%増となった。前年実績を上回ったのは4カ月連続。インバウンド(訪日外国人)消費を取り込み、化粧品などの販売が好調だった。 あべのハルカス近鉄本店は開店3周年の記念セールなどの施策で7.7%増となった。訪日客需要も伸びて免税売上高は過去最高となった。10.6%増となった高島屋大阪店は訪日客向け商品が9割増とけん引した。 一方、大丸松坂屋百貨店の大丸梅田店は1.1%減。気温が平年を下回ったため春物衣料の売れ行きが振るわなかった。
出典:『阪急うめだ本店4カ月連続増 3月、大阪市内の百貨店販売 』日本経済新聞2017年4月4日
ここに注目!!
- インバウンド(訪日外国人)消費を取り込み、化粧品などの販売が好調だった
- 訪日客需要も伸びて免税売上高は過去最高となった
- 訪日客向け商品が9割増
これは爆買いが復活しているかも? ということで実際にデータを出してみました。
1、外国人観光客売上
外国人観光客売上データ(2015年1月〜2017年2月)
日本百貨店協会が外国人観光客売上・来店動向を毎月出しているのですが、『爆買い』が流行った2015年度から現在までの訪日外国人の売上データを出してみました。データを見ると、4月から関税が厳しくなったり、円高になっているため、売り上げ落ちています。しかし、去年の12月には完全に復調しています。それどころか2017年1月には2015年4月を抜いて、過去最高を更新しています。何が売れていたのかを一般物品と消耗品で切り分けてみましょう。
※一般物品と消耗品とは
一般物品と消耗品の売り上げ(2015年1月〜2017年2月)
こうして見ると消耗品がすごく増えているように感じます。そこで割合も出してみました。
一般物品と消耗品の売り上げ割合(2015年1月〜2017年2月)
2015年1月には10%ほどだった消耗品が、徐々にシェアを広げ、現在ではなんと約40%も占めています。 個別に見ていきましょう。
消耗品の売り上げ(2015年1月〜2017年2月)
割合が示していた通り、2015年1月からずっと伸び続けています。2017年2月には800億円に迫る勢いです。2015年1月から2017年2月では約5倍に成長しています。
一般物品の売り上げ(2015年1月〜2017年2月)
2015年の爆買いでは高級品が売れまくりました。しかし、円高と関税の兼ね合いで2016年4月以降は収まっていましたが、2016年12月から一気に伸び始め、2017年1月には歴代3番目の売り上げを記録し、当時の勢いと同じレベルになっています。 では次に、爆買い収束の原因の一因にもなった為替レートを見てみましょう。
2、為替レート
この売り上げデータが訪日外国人という括りであるため、免税カウンターを使った上位4カ国(中国、香港、台湾、韓国)の為替レートを載せます。
中国元円為替レート(2015年1月〜2017年3月)
2016年11月から上がり始めましたが、あまり上がることもなくすぐに折れてしまいました。
香港ドル円為替レート(2015年1月〜2017年3月)
中国以上にV字に回復していましたが、2015年の水準には届かずに折れています。
台湾ウォン円為替レート(2015年1月〜2017年3月)
2015年8月の水準に回復し、それを保っています。
韓国ウォン円為替レート(2015年1月〜2017年3月)
4カ国で戻り幅が1番低いです。
ピーク時でも以前より安い傾向
これらを見ると2016年11月ごろから上がり始め、12月にはピークにあります。一般物品と消耗品も同じ時期に上がり始めていました。ただ、このピーク時の水準は2015年の水準と比べると、各国ともに安いです。だとすると、円安自体はきっかけにはなったが、本質は他にもありそうです。次に訪日外国人の購買客数と客単価を見ていきましょう。
3、購買客数と客単価
購買客数(2015年1月〜2017年2月)
円高や中国での関税が変わった2016年4月以降もそんなに下落せず、2017年1月には過去最高になっています。
客単価(2015年1月〜2017年2月)
客単価は円高や中国での関税の影響を真正面に受けて、4月以降はかなり落ち込みましたが、2016年12月には落ち込む前の水準には戻っています 。
V字復活ではなく、新しい爆買いが起きている
「2017年の爆買い」と「2015年の爆買い」の違い
- 訪日外国人数がさらに増えた
- 当時ほど円安ではない
- 消耗品の売上が全体の約10%から約40%へ増えた
- 客単価がやや少なくなった
購買客数がうなぎのぼりで客単価も回復しつつあるため、「当時の爆買い」以上の売上規模になっています。これは爆買い復活ではなく、「新しい爆買い」と言っても良いのではないでしょうか? 為替レートの影響はもちろん受けますが、それを超えた勢いが今のインバウンド市場にはあります。これからもオリンピックに向けて着々と訪日外国人は増え続けることが予想されるため、より大きな経済効果が期待できそうです。