訪日外国人観光客は年々増加し、2016年には2404万人を記録、過去最高を更新しました。2020年には東京オリンピックを控え、更なる需要の伸びが期待されていますが、解決すべき課題が幾つか残されています。その1つが医療費未払い問題です。
医療費未払い問題とは
医療費未払い問題とは 訪日客が旅行中にケガや病気などにかかったものの、旅行保険に未加入のため医療費が全額自己負担となり、未払いのまま帰国してしまうという問題を医療費未払い問題といいます。
未払い費用は病院の損失となってしまい、病院経営を圧迫する要因になってしまいます。 観光庁によると訪日客の約30%が旅行保険に加入していないといい、医療費未払いの原因の1つと考えられています。
医療費未払い問題の解決策はある?
では、医療費未払い問題の解決策はあるのでしょうか?幾つか挙げてみました。
訪日観光客への旅行保険加入を推進
訪日観光客に対して旅行保険に加入することのメリット、未加入の場合のデメリットをきちんと認知させ、加入を促すことが最も効果が高くかつ実行可能な対策といえるでしょう。 旅行保険加入者を優遇・優待する仕組みを国や自治体、旅行会社等が加入者に提供することができれば、旅行保険加入の大きなインセンティブになるのではないでしょうか?
医療費の前払い等、医療機関が自衛する
日本は国民皆保険制度のため、医療費は後払いとなりますが、アメリカ等国民皆保険制度ではない国の場合、医療費、治療方法の説明等が治療前に行われ、患者は支払い能力も考慮して治療内容を決めるようになっていたり、治療費を前払いしないと治療が受けられないという仕組みになっていたりします。 医療という観点から見て、日本も訪日環境客に対してこのような方法を取ることが正しいかは別に論ずる必要がありますが、未払いとなった医療費は医療機関の損失となる以上、医療費の前払い等で未払いが発生しないように自衛することも検討すべきだと思います。
訪日外国人向け保険の現状
訪日観光客の増加に伴い、大手損保各社は訪日観光客向けの保険の販売を始めていますので、事例を1つご紹介します。
東京海上日動の事例
東京海上日動では日本入国後にスマートフォンやインターネット経由で加入することができる訪日外国人向け海外旅行保険を販売しています。 ケガや病気になった場合の治療費等を1000万円まで補償する他、医療機関の紹介や手配等のサービス、パスポートやクレジットカードの紛失時のサポート等を受けることができます。 保険料は旅行が7日までの場合は2,820円とリーズナブルに設定してありますので、万が一を考えた場合訪日客側にもメリットが大きいと言えるでしょう。
医療費未払い問題への今後の対応
このように医療保険未払い問題の受け皿として保険会社の訪日客向け商品等の整備が進んでいますが、今後さらなる成長が見込まれているインバウンド市場に水を差さないためにも訪日旅行保険の認知と加入を徹底していく努力を国、自治体、旅行業界が一体となって推進していくことが必要です。 また、医療機関側も治療前に支払いについて担保できるように前払い制度やクレジットカードの番号やパスポート等のコピーを事前に控える等の手順を整備し、医療費未払い問題を未然に防ぐ対策が求められることになります。