インバウンド需要の急増に伴い、受け入れ側としての日本にも準備や対応が必要な場面が増えていますが、中でも重要度が高いのが多言語対応です。
日本の誇る「おもてなし」にも言語によるコミューケーションが欠かせません。
今回は言語の壁を超えるための試みとして携帯翻訳機とその活用事例を紹介します。
携帯翻訳機とはどんなものがあるのか
かつては夢のツールだった翻訳機ですが、テクノロジーの発展に伴い実用性の高いものがスマートフォンのアプリやウェブサービス、専用機等の形で発表されています。
今回はその中から特徴のある2機種を紹介します。
①旅行に特化した翻訳機『ili(イリー)』
世界初のインターネットがいらない音声翻訳機として開発されたイリーは旅行で良く使うフレーズを中心とした「旅行に最適化された翻訳辞書」を搭載した旅行者のための翻訳機です。 スティック型で重さ42gと旅先でも邪魔にならず、かつインターネットが不要で英語、中国語、韓国語に翻訳することが可能です。 イリーに向かってボタンを押しながら日本語で話しかけるだけで設定した任意の言語で翻訳されて出力されるという簡単操作がウリです。
②対話が出来るイヤホン型の翻訳機『Twobow』
Twobowはワイヤレスイヤホンタイプの翻訳機で、自分と相手が1つずつ装着することでお互いの話した言葉が相手の言語に翻訳され、相手のイヤホンに流れるという双方向リアルタイム音声翻訳を実現しています。 対応言語は英語をはじめ中国語、韓国語他37か国語に対応しており、相手が誰であっても口で話して耳で聞く、という当たり前のコミュニケーションを自然に実現してくれます。
どんなところで活躍しているのか
このような翻訳機の活用事例も出てきており、それぞれに良い感触を得ているようです。直接インバウンド需要増の影響が出ている観光産業の現場や話題の医療機関の事例を紹介します。
自治体が翻訳機導入を後押し『銀山温泉』
全国でも有数の温泉地としてしられる銀山温泉がある尾花沢市は小型の音声翻訳機を10台導入し、銀山温泉の観光案内所に2018年4月5日から設置しています。おもてなしの向上を目指す尾花沢市では昨年の10月から試験運用を進め、使いやすさや操作性等を評価した上で導入を決めました。地域特有の固有名詞を追加で登録することでよりスムーズに外国人観光客に銀山温泉の魅力を伝えることができると期待が高まっています。
外国人観光客の主要移動手段の『タクシー』
愛媛県松山市の伊予鉄タクシーは翻訳機の導入によって運転手と外国人利用客のコミュニケーションをスムーズにし、増加する訪日外国人観光客の取り込みを狙います。 伊予鉄タクシーの担当者によると松山にも外国人観光客が増えているが、タクシーの利用は少なかったので、翻訳機によって安心してタクシーを利用してもらえるようになるのでは、とのことです。
専門的な多言語対応が求められる『医療現場』
訪日中の外国人が体調を崩した場合、病院では医療用語や病状のような微妙な言葉を含めた多言語対応が必要です。 国立研究開発法人情報通信研究機構と富士通研究所が開発し、今年度中に発売を予定している医療従事者向けの翻訳機は「シクシク」、「ズキズキ」のような様々な痛みの表現や医療用語にも対応しているのが特徴です。
進歩を続ける翻訳機
飲食店やお土産販売等、外国人観光客が訪れる現場ではまずメニューや商品説明等の多言語対応が優先されているのではないかと思いますが、会話によるコミュニケーションはやはり気持ちの伝わるコミュニケーションでしょう。 言語習得は一朝一夕にできるものではありませんが、進歩を続ける翻訳機を活用することがより深く日本の魅力を伝え、訪日リピーターを生みだすことにつながることになるのではないでしょうか。