訪日外国人観光客は年々増加しており、宿泊施設や混交施設等の観光産業を中心に成長が見込まれると同時に受け入れ態勢の充実が求められています。
インバウンドへ向けた課題としてまず挙げられるのが言語対応ですが、翻訳ニーズを支える受け皿として年々成長を続ける翻訳市場の見通しと今後求められる対応について見ていきましょう。
翻訳市場は成長傾向
日本の翻訳市場は年々拡大傾向にあり、年間2,000億円〜3,000億円の市場規模と言われていますが、中小の会社が多いという特徴があり、約2,000社ほどが事業を行っています。 市場が成長している要因として挙げられているのがインバウンド需要の拡大です。 特にオリンピック、パラリンピックを控える2020年へ向けて引き続き増えるであろう訪日外国人観光客向けの需要と、近い将来の人口減少によって外国人雇用が進むことによる潜在的なニーズが顕在化にすることが当面の市場の成長をけん引すると予想されています。
最大手の翻訳会社は4期連続の増収増益
日本で最大規模の言語サービス会社・翻訳センターはこの成長期をしっかりとらえ、18年3月期は2桁増益、4期連続増配となる他、19年3月期も増収増益が予想されています。 同社の翻訳サービスの主力は企業向けの専門性の高い分野向けで、医薬翻訳や特許翻訳、ゲーム・漫画などの翻訳の他にも翻訳通訳や国際会議運営なども展開しています。 好調な業績を支えるのはグローバル展開を志向する企業動向が背景となる翻訳ニーズで、知的財産権、新薬開発、新製品開発、海外展開、IR関連等同社の専門性が発揮される分野への拡大が挙げられます。
オリンピック需要は業界全体への追い風
同社の社長でもあり、業界団体・一般社団法人 日本翻訳連盟の会長を務める東 郁男氏は翻訳市場にとって2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を大きなトピックとして捉え、関連した様々な業界での翻訳・通訳等の需要が高まることを期待するとともに需要に応えられる業界を作り上げていく重要性を語っています。 東京オリンピックに参加する国や地域は200カ国を超え、公的な文書の翻訳ニーズから観光業界の現場でのニーズまで、多様な需要が大いに期待されているのです。
まとめ
日本の翻訳会社のサービス品質は外国の翻訳会社の提供する品質と比較して高いと言われており、海外の翻訳会社にとっては参入障壁として機能しているようですが、翻訳に関する技術革新は加速しており、翻訳ツールの精度は日に日に向上しています。 このように需要が増大していき、機械化によるコストダウン等も予想されている経営環境の中、高い品質を維持したままテクノロジーを上手に活用したコスト優位を実現するための努力が業界の発展につながることになりそうですね。