インバウンド人口の増加に伴い、嬉しい悲鳴とともに様々な問題も噴出しています。中には白タク問題や治療費未払い問題等、ネガティブな問題も少なくないのが実情です。
今回は外国人観光客による犯罪の動向について見ていきましょう。
外国人の犯罪状況
外国人による犯罪数
2015年に永住者を除く外国人が起こし、全国の警察が摘発した事件は9417件、そのうち国別で最も多かったのがベトナム人による2556件でした。これは2014年の1972件から1.3倍の増加となっています。
国別の件数
国別では中国の2390件が2位、ブラジルの1282件が3位と続きますが、殺人や強盗、放火、強姦等の凶悪犯に限定してもベトナム人の34件が最も多いという結果になりました。 外国人犯罪の摘発件数は2005年の33037件がピークでその後年々減少傾向ですが、ベトナム人の犯罪は3倍以上に増加していることから、外国人犯罪の勢力図の変化に警察関係者は警戒感を強めています。
ベトナム人の犯罪が増えた理由
ビザ発給条件の緩和と犯罪の関係
ここ数年のインバウンド急増の背景には国策としてのビザ発給条件の緩和があります。 ベトナムの事例を見てみると2014年11月20日に観光目的で指定旅行会社経由での旅行の場合、1次ビザの実質ビザ免除が実施されました。 2012年には5万5千人だった訪日ベトナム人は2016年には史上最多となる23万人へと増加しています。 2017年にはハノイに日本政府観光局が事務所を開設し、プロモーションを強化していることやLCC便の就航等を受けてこれからも訪日ベトナム人の増加が見込まれています。
訪日ベトナム人の数が増加
ベトナム人の犯罪が増加した理由の一つとして、訪日ベトナム人が増加したという母数の増加が挙げられるでしょう。また、訪日ベトナム人の平均滞在日数は1か月以上と全国籍の中で最も長いということも理由の一つとなっている可能性があります。 また、ベトナム人留学生も増加していることから、ベトナムの犯罪組織と在日ベトナム人が連携するケースが増加しているのではないかという見方もあります。
ベトナム人が犯した主な事例
具体的な事例についてもいくつか見ておきましょう。
ケース① 大阪での殺人事件
ベトナム人による犯罪では2015年9月に大阪市生野区で発生したベトナム人同士の殺人事件があります。 この事件では4人が殺人の容疑で逮捕されています。
ケース② 東京での傷害事件
2016年9月には東京都あきる野市でアルバイト女性が路上で襲われるという通り魔事件が発生、ベトナム人の男(22)が傷害容疑で逮捕されています。
ケース③ 関西での大麻所持、窃盗
2018年にはベトナム国籍の男性が兵庫他5県で万引を繰り返した上、大麻草を所持していたとして、窃盗や大麻取締法違反などの疑いで逮捕されています。 兵庫県警の捜査によると被害総額は約450万円相当、容疑者はドラッグストア等で化粧品他約2500店を万引きし、盗んだ商品をベトナムの知人へ送っていたことから転売目的の犯罪の可能性が指摘されています。
これからの外国人による犯罪について
順調に増加を続けているインバウンド人口ですが、データ上は訪日外国人観光客による犯罪数は減っているため、治安が維持されていると見ることもできるでしょう。 しかし、それまではインバウンド人口が少なかったベトナム人がビザ緩和以降訪日するに伴い、犯罪発生件数としても1位に躍り出たという点は見逃せません。 国策としてビザ発給条件を緩和するということは同時にこれまで訪日していなかった層の訪日が増加することを意味しており、それによって犯罪が引き起こされる可能性も大いにあり得ます。 世界一のインバウンド誘致を誇るフランスにしても度重なるテロ事件によって旅行支出が減り続けているというデータがあることから、観光立国を目指す上で治安の維持と確保は絶対条件です。 訪日外国人観光客へのおもてなしを考える一方で犯罪抑止の対策や方策も必要とされています。