米中貿易摩擦の影響によって中国元安が進行していますが、今や大国である中国の動向は世界的にも影響力を持つようになっています。
中国元安が進み、円高になった場合にインバウンドにはどのような影響が出るのか、考えてみることにしましょう。
国別インバウンド1位は中国
2017年のインバウンド人口は2,896万人と過去最高を記録しましたが、国別のトップは中国人の735万人で、前年比15.4%増となっていることから、インバウンド需要のかなりの部分を中国人観光客が支えていることがわかります
人民元安になるとどうなるのか
中国元が安くなると市場不安が起こる可能性があり、過去の傾向から見ると円高、株安に振れることが考えられます。 円高になった場合には中国への輸出業にブレーキがかかることが予想される他、中国人観光客の訪日動向にも影響が出ることでしょう。
訪日人口減少の可能性
中国人による訪日旅行が盛んになった理由にはビザ発給要件の緩和政策の他、いくつかの原因が考えられますが、日本円に対する中国元高が中国人の訪日旅行を後押しし、購買意欲を刺激したことは間違いありません。 中国人は旅行先としてタイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、フィリピン等アジアの周辺諸国や欧米等と日本を比較しますが、元安・円高になった場合に費用的な部分で魅力が失われることになり、訪日人口の減少が予想されます。 また、訪日した後の購買行動にもマイナスの影響が出ることになるでしょう。
爆買いの阻害
中国人観光客のインバウンド消費、といえば爆買いが連想されます。 流行語にもなったほど目立った訪日中国人による買い物ですが、一時は大手百貨店がインバウンド向けの高額な商品を扱うエリアを充実させるなどするほどの購買力を見せつけました。 2018年時点ではピークの時の勢いは感じられないものの、購買対象の中心がブランド品等の高額商品から化粧品、薬、雑貨等の日用品にシフトしつつもまだまだ大きな金額が消費され、今後の伸びしろも残されている印象です。 しかし、前述の通り中国人が訪日するきっかけとなったのは元安・円高によって発生したお得感であり、ネットや免税店で商品を購入するよりも現地で商品が安く買える上、日本の食事や文化を楽しむことができるという所です。 元安・円高になってしまうと日本の中国人に対しての訴求力も弱まってしまうことが考えられます。
まとめ
越境ECサイトの利用の方がお得?
単純に日本の商品を購入したい、ということであれば、個人輸入の形で関税を取られずに商品を購入できる越境ECという仕組みが一般的になっており、旅費を考えれば越境ECサイトを利用した方が安く日本の商品を購入することが可能になっています。
買い物だけでは不安だが、コト消費のクォリティも、、
今後、この元安傾向がどのような動きをするのか現時点では不透明ですが、日本としてはいつまでも買い物が一番の売りの場合、常にこのような危機感を感じなくてはならなくなってしまいます。 そこで日本ならではの体験を価値として提供するコト消費、ということになるのですが、この点についても疑問が残ります。 筆者は中国人女性と結婚したこともあり、中国人の友人の訪日旅行を何度もアテンドしていますが、中国人観光客のニーズをきちんと汲み取ったサービスに出会ったことは殆どありません。
今後の提案
国別トップの中国人観光客のニーズにきちんと寄り添った、中国人に特化したサービスの開発等、思い切った手で中国人をもてなす、という切り口があってもいいのではないか、と中国人と日本を旅行する度に痛感しています。