化石燃料を利用した自動車から電気自動車へと、自動車業界のイノベーションには近年目を見張るものがありますが、各国の企業が熱心に取り組んでいるのが自動運転技術の実用化です。
今回は自動運転タクシーの実用化によってインバウンド層の重要な移動手段、タクシーに何が起こるのかについてまとめてみました。
乗客を乗せて実験を開始した自動運転タクシー
以前の記事でもタクシーの自動運転について触れていますが、タクシー大手の日の丸交通と自動運転技術開発を行うZMPによる公道での自動運転タクシーによる実証実験が2018年8月27日から開始されました。 この自動運転タクシーは緊急時に備えて運転席と助手席に係員が乗車しているものの、公道での営業走行は世界発となります。
自動運転タクシーのメリットとデメリット
自動運転が実現した場合、どのようなメリットが考えられるのでしょうか?まず考えられる主なメリットから確認してみましょう。
メリット
①タクシー料金が安くなる
自動運転タクシーには従来のタクシーでドライバーが行っていたことを自動化するためのセンサーやシステムなどが必要となり、高額な投資が必要となるためにサービス開始当初はそれなりの料金となることが予想されますが、普及期に入り車両やシステムが低価格化してくるとドライバーの人件費がかからない分、タクシー料金を安くすることが出来ると考えられます。
②外国人対応も可能
これまでタクシーのサービス品質はドライバーに依存していましたが、自動運転タクシーはドライバーではなくシステムやAIが運転や乗客対応を行います。 そのため、外国語対応はもちろん、運転そのものの品質も原則的に同じ質で提供されることになります。 現状、外国人観光客がタクシーを利用しようとすると言語対応が難しいという理由で利便性が高いとは言えない状況ですが、自動運転タクシーはこの点をクリアできると思われます。
③ドライバー不足の解消
現在のタクシーはドライバーありきですが、タクシー業界では慢性的なドライバー不足が起きています。経験のあるドライバーの高齢化や新しくドライバーになる人材の不足などから将来的にタクシー事業そのものが立ち行かなくなる可能性があるところを自動運転タクシーであればドライバーに依存せずに事業を行うことができます。 その他、有人運転では対応が難しいような遠方にも車両を配置することで事業を行うことができます。
デメリット
今度はデメリットについてもみてみます。安全性については現在の有人運転と同レベルが確保されているという前提です。
①事故の責任問題
自動運転には完全無人となるレベル4、緊急時のみドライバーが対応するレベル3があり、レベル4の実用化は2020年代後半以降という予測が多いようです。 技術的に事故の可能性がなくなることが前提ですが、万が一の事故の場合にシステムの過失となるのか、責任の所在を問う法整備が必要になります。
②ハッキングやテロなどの犯罪に悪用
自動運転に利用されるシステムがハッキングされる等の可能性が考えられ、そのような事態が起きた場合には大きな被害が予想されます。 また、無人であるということを悪用し、爆発物などを載せてテロ行為などに悪用されるという可能性も考えられます。
③タクシードライバーの待遇悪化、職そのものがなくなる
緊急時のみドライバーが操作を行うレベル3の自動運転タクシーの場合でもドライバーが運転に関与する場面は少なく、給与が低くなることが考えられます。 また、レベル4の完全無人運転が実現した場合にはタクシードライバーという職業そのものがなくなることもあり得ます。
まとめ
自動運転が実現した場合、個人が車を所有するのではなく、皆で車をシェアするような社会になるのかもしれませんし、そうなるとタクシーという概念も変わってくるのかもしれません。 タクシードライバーの不足によって検討された自動運転タクシーがタクシードライバーの職を奪う、という見方をすると皮肉なものを感じますが、自動運転の実用化によって新たに創出されるサービスや価値、仕事があるはずです。 夢の技術、自動運転は意外なほど近いところまで来ていました。