インバウンド増によって新たに発生した問題の1つとして訪日外国人観光客による医療費の未払い問題がありますが、国民健康保険についても大きな問題が持ち上がっています。
自営業や無職の人のための制度である国民健康保険制度ですが、これを悪用する外国人が増えており、その根幹が危うくなっています。
外国人による国民健康保険の悪用について、現状を見ていきましょう。
外国人の国民健康保険比率が増加
現在と現在までの外国人の国民保険加入
元々国民健康保険には外国人は加入できませんでしたが、昭和61年に国保法の施行規則から国籍条項が撤廃されたことで外国人も加入が可能になりました。 外国人が国民健康保険に加入するためには1年の在留期間を満たす必要がありましたが、平成24年に改正された住民基本台帳法に伴い、90日以上の在留資格があれば加入可能になりました。 厚生労働省のデータによると国民健康保険の28年度の被保険者は3013万人で、全体としては減少しています。 しかし、外国人だけを見ると99万人と3.3%を占めており、19年度と比較した場合、15万人増加していることがわかります。
入国目的を偽って国保を悪用する事例が相次ぐ
この国民健康保険制度を悪用する事例が増えています。 医療目的で外国人が入国した場合、医療費は全額自己負担になりますが、目的を「留学」や「会社経営」などと偽り、90日以上の滞在をすることで国保に加入し、高額な治療を1~3割の自己負担で受けるという事案、またはそのような不正が疑われる事案が増加しています。
なりすましによる不正の事例も
26年には不法滞在のベトナム人女性が妹の国民健康保険証を本人になりすまして利用し、総額で1千万円以上のエイズウイルス治療を2年以上受けていたという事例が明らかになりました。 このようななりすましの事例は外国人に限らず日本人であっても可能なこともあり、医療現場では見つけようがない、との声が上がっています。
自民党は対策を検討
28年度の国保は1468億円の赤字となっており、公費によって穴埋めされています。 このような国保の悪用は日本の医療保険制度そのものを脅かすものであるとして、自民党では国保の加入審査の厳格化などを含む提言をまとめる方針です。 また、日本国内での医療費だけでなく、国保に加入していると海外療養費や出産育児一時金を受給することも可能になりますが、こちらも不適切な利用があると考えられており、同時に検討すべき課題として挙げられています。
まとめ
国保の悪用を防ぐ対策としては国保への加入の厳格化、入国目的が偽装である場合に医療現場で確認できる仕組み等が考えられます。 医療現場からは国民健康保険カードを写真付きのものにするなど、具体的な案も出ていますが、いずれにしても現状では入国直後に高額な治療を受けた外国人がいたとしても合法的に国民健康保険に加入している限り、それを咎めることは出来ません。 国保で赤字となっている部分は我々国民の納めた税金で補われている現状を考えると早急に妥当な対策が必要だと言えるでしょう。