2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震は震度7を記録し、大規模な停電を含むライフラインの停止等、未曽有の被害をもたらしています。
外国人観光客からの訪問地として人気の北海道ですが、多くの外国人観光客が被災し、足止めをされる事態となりました。
今回の地震によるインバウンドへの影響や今後求められる対応等について見ていきましょう。
熊本地震を超える経済損失
北海道胆振東部地震の影響によって多くの地元企業が操業を停止せざるを得ない状況となり、道民の生活にも大きな影響が出ています。 2016年に熊本県で発生した熊本地震での経済損失は内閣府の試算によると最大4.6兆円と言われていますが、北海道と熊本県の上場企業の数を比較すると北海道は熊本県の約9倍であり、経済損失は5兆円に達するという見方もあります。
インバウンドにおける損害は1日1億3500円以上?
今回の地震によって窓口となる新千歳空港が使用できなくなったことから訪日を予定していたツアーのキャンセル等が相次ぎました。 北海道庁のデータによると、2017年度に北海道を訪れた外国人観光客は279万人となっています。 これを365日で割ると1日に北海道を訪れる外国人の人数は7,643人です。 この人数に直近の2018年4~6月期の訪日外国人1人当たりの1日の消費額17,700円を掛けた金額が1日に外国人観光客が消費する金額ということになりますが、1億3500万円にもなります。 また、今後訪日を予定していた外国人観光客が予定を変更したり、キャンセルしたりということが予想され、さらに長期的な損失が発生することが予想されます。
279万人(2017年度北海道に訪れた外国人観光客数)
279万人÷365日=7,643人(1日に北海道を訪れる外国人観光客数)
17,700円(2018年4~6月期の訪日外国人1人当たりの1日の消費額)
7,643人×17,700円=1億3500万円(北海道に訪れる外国人観光客全体の1日の消費額)
情報不足に戸惑う外国人観光客
北海道国際課は地震が発生した当日の午後に外国人滞在者向けに英語、中国語、韓国語の3か国語に対応する電話相談窓口を設置し、観光客用の避難所を札幌市6か所に設ける等の対応を行い、ホームページや観光案内所、領事館等を通して告知を行いました。 しかし、地震が発生した6日から7日まで新千歳空港では国際線の運航が出来なくなったことによって足止めを余儀なくされた外国人観光客の中には避難場所の情報が分からず、路上や公園等で過ごす外国人観光客の姿が目立ちました。 地震が発生した当日に避難所等の対策を行ったという意味では北海道の対応は迅速と言えそうですが、そのような対応についての情報配信の手段が充分ではない可能性が浮き彫りになった形です。
有事の際の対応を官民挙げての整備が必要
2018年には多くの災害が日本を襲い、海外には「災害が多い国・日本」という印象が強く伝わっているはずです 2020年には東京オリンピックを控え、観光立国を目指す日本にとっては水を差された形ではありますが、北海道胆振東部地震、関西を襲った台風21号を教訓として有事の際の避難マニュアルの整備や避難経路の多言語対応、災害情報の配信方法の見直し等、改めて徹底することで外国人観光客が安心して旅行を楽しめる日本を目指すべき時期が来ているのではないでしょうか。