インバウンドの増加によってネガティブな問題が持ち上がる事例がありますが、その中の一つが有事の際の対応についてです。
多言語対応はインバウンド受け入れのキーポイントの一つですが、特にトラブルや危機的状況の場合にはその重要性が高くなります。
今回はトラブル時の言語対応について、保険会社の取組みを見てみましょう。
自動車保険の対応
交通事故が起きた場合、コミュニケーションがきちんと取れるかどうかが適切な処置を行うために重要になりますが、ドライバーが訪日外国人だった場合、言葉の問題で正確な情報をやり取りすることができない可能性があります。 2020年に東京オリンピックを控え、訪日外国人ドライバーが増加すると予想されていますが、それに伴い各保険会社は多言語対応を推進しています。
訪日外国人のレンタカー利用者数と事故件数
国土交通省自動車局のデータを元にした全国レンタカー協会の統計を見ると、2016年度にレンタカーを利用した訪日外国人は増加傾向となっており、北海道で6万2977人、沖縄で20万6413と今後も増加が見込まれます。 2016年の時点ではレンタカーによる事故は6150件発生していますが、そのうち外国人ドライバーによる事故は1.3%にあたる81件と少ないのですが、母数が増えれば事故件数が増加することも考えられますので、備えあれば憂いなし、ということでしょう。
インバウンド向け自動車保険は2015年から多言語対応開始
インバウンド向け自動車保険のうち、最も早い段階で多言語対応をスタートさせたのが損害保険ジャパン日本興亜株式会社で、2015年11月に24時間・365日稼働のコールセンターで5カ国語による「事故受付」を開始しています。 実際のやり取りは事故の当事者、事故担当者、通訳オペレーターの3者間通話で行われますが、2018年4月時点で15か国語に対応しています。
保険会社各社の自動車保険も多言語対応
・損害保険ジャパン日本興亜・・・・・・・15か国語対応
・東京海上グループ・イーデザイン損保・・15か国語対応
・三井住友海上・・・・・・・・・・・・・13か国語対応
現在は損保ジャパン日本興亜以外にも各社の自動車保険が3者間通話による多言語対応サービスを提供しています。 主なところでは東京海上グループ・イーデザイン損保が15か国語対応、三井住友海上が13か国語対応となっています。
訪日旅行保険で緊急時の対応を
交通事故以外にも災害や病気等、訪日旅行中に予期せぬトラブルに見舞われることは充分に考えられます。 そこで保険会社各社は訪日旅行保険で訪日外国人の万が一をサポートする用意をしています。
代表的な訪日旅行保険の対応言語数
・損保ジャパン日本興亜・・3か国語対応(英語、中国語、韓国語)
・東京海上日動火災・・・・3か国語対応(英語、中国語、韓国語)
・三井住友海上火災保険・・中国語(訪日中国人に特化した保険商品のため)
いずれのサービスも来日してからスマートフォン等で加入することが可能で、医療機関での治療費等が保険でカバーされることになります。 三井住友海上火災保険の訪日旅行保険は中国人向けに特化した商品となっているため対応言語は中国語のみですが、損保ジャパン日本興亜と東京海上火災保険では3か国語で医療機関の案内等に対応しており、スムーズに治療を受けることができます。 訪日外国人観光客による医療費の踏み倒しが問題となっていることを考えると、訪日旅行保険に加入することは外国人旅行者にとっても万が一の治療費負担を気にすることなく安心して旅行を楽しめるという意味で大きなメリットがあると思われます。
訪日を予定している外国人に広く周知を
レンタカーの場合、車を借りる段階で保険に加入することが一般的ですが、訪日旅行保険の場合は加入してもらうことが前提となります。 2018年、日本では多数の自然災害が猛威を振るい、被害にあったり不安な思いをしたりした訪日外国人観光客は少なくないはずです。 保険会社自身による宣伝広告はもちろんですが、旅行会社、旅行サイト等、訪日を検討している人が接触するメディアを訪日旅行保険へのコンタクトポイントとして活用する他、訪日してからの交通機関、宿泊先等でも認知してもらうような工夫が必要ではないでしょうか?