増加するインバウンドによって宿泊施設の不足が懸念されています。その受け皿として大きな期待を集めている民泊施設の運営を法的に整備したのが2018年6月に施行された民泊新法です。
シェアリングエコノミーとしても新たなビジネスとしても注目される民泊が新法施行から半年を経過し、どのようになっているのかを見てみましょう。
事業廃止する民泊事業者が出ている
2018年6月に施行された民泊新法ですが、10月12日時点の届出件数は1万2858件、受理件数は1万1612件となり約90%が受理されています。 このように登録件数は増加しているものの、事業廃止の動きも出ています。 観光庁がまとめた12月14日時点の民泊事業者の事業廃止済件数は全国で287件に及んでいます。主な地域別の事業廃止件数は以下のようになります。
・札幌市 75件(届出提出数:1487件)
・大阪市 31件(届出提出数:1623件)
・東京都新宿区 23件(届出提出数:884件)
・東京都中野区 23件(届出提出数:150件)
・東京都台東区 15件(届出提出数:1424件)
・東京都豊島区 14件(届出提出数:1540件)
・東京都港区 12件(届出提出数:1259件)
・沖縄県 11件(届出提出数:1640件)
民泊新法では年間の営業日数が180日に制限されることから民泊事業者にとっては収益化が難しくなることが考えられると指摘されてきましたが、今回の事業廃止にも影響があると見られています。
京都市は民泊施設に対して指導を徹底
多くのインバウンドが訪れる京都市は民泊に対して全国に先駆けた取組をしています。 京都市は2018年4月から民泊担当者を増員し、7,272回の現地調査を実施し、届出を行っていない民泊施設のうち1,976施設について営業中止や撤退などの厳正な対応を行っています。 その結果、2017年に指導中だった届出を行っていない、未許可の民泊物件は200件あったところ、2018年11月末には9件まで減少しています。 届出をしていない民泊施設は全国にまだあると思われることから、京都市による民泊施設への指導の取り組みをモデルとして各自治体が取り締まりを強化するという動きも考えられます。
民泊ではなく旅館業として登録する動きも
民泊施設側からするとネックとなっている180日ルールですが、営業日の制限がない旅館として登録する、という動きも見られています。 従来、旅館業として登録するためには最低客室数の縛りがありましたが、改正された旅館業法では1室からの営業が可能になる他、条件が大きく緩和されています。
大分では民泊も好調
では、民泊施設全体が不調なのか、と思いがちですが、必ずしもそうではありません。 日本を代表する温泉地である湯布院がある大分県は対前年比200%を超える外国人観光客が訪れ、民泊物件も活況を示しています。 九州で民泊施設の運営・代行サービスを提供しているairBest(株)(エアベスト)は湯布院で急増しているインバウンド向けの宿泊需要に応えるべく複数の施設を受託運営しています。 多言語対応によるサービスを提供している成果がAirbnbのような民泊サイトでの高評価に繋がり、高い収益を得られていることから、投資物件としても注目を集めているといいます。
まとめ
民泊事業者の届出廃止数や行政からの指導等を見ると民泊そのものの先行きが怪しい、という印象になりますが、記事で紹介した大分県・湯布院のようにインバウンド獲得に成功したエリアでは宿泊施設のニーズが急速に高まり、民泊で収益化しているケースもあります。 また、福岡県を見ると届出件数が674件と多いのに対し、事業廃止済件数は3件と低く留まっていることから、福岡県も180日ルールがあったとしても収益化できる環境だということが推察されます。 民泊新法施行前からの事業者にとって民泊新法が厳しいのは事実ですが、旅館業法での登録や立地やニーズのリサーチ、適切な単価設定やサービスによる高評価の獲得などをしっかり行えば収益化することは可能です。 今後も増加が見込まれるインバウンドのニーズを逃さないよう、手を打っていきましょう。