メイドインジャパンの復興は、自国からの発信だけでは成しえません。海外から求められるという経済的な理由で、図らずともメイドインジャパンのよさが浮き彫りになるケースもあります。コスメ業界では、今まさにこの現象が起きています。
インバウンド景気の追い風に乗る化粧品業界
日本百貨店協会は「外国人観光客の売上高・来店動向」を発表しましたが、それによると93店舗を対象とした2018年12月の免税総売上高は約302億円となり、25カ月連続でプラスと右肩あがりになっています。 内訳を見るとトップは化粧品となっています。 百貨店での化粧品売上はインバウンド効果が如実に現れていますが、各メーカーの業績も好調となっています。
資生堂は売上、利益ともに過去最高
https://www.shiseido.co.jp/
中国でも人気ブランドとして存在感を発揮している資生堂が発表した平成30年12月期連結決算によると売上高は8.9%増となる1兆948億円、最終利益は2.7倍となる614億円でと過去最高となりました。 このうち、売上へ目を向けると中国市場は前年比でプラス467億円、32%増となっている他、免税店での販売がプラス253億円の40%増と中国マーケットでの好調振りとインバウンド増による免税品の売上増が大きく全体を牽引しているということがわかります。 このような好調を受け、資生堂は栃木県大田原市に新工場を新設、2019年度中に稼働させる他、大阪工場でも新設・増強を2020年度に計画することで市場の要求に応えるタイさえいを整えています。
コーセーも好調を維持
https://www.kose.co.jp/
雪肌精他の商品が中国でも高い知名度を得ているコーセーも資生堂に負けじと好調です。2018年3月期の決算を見ると売上高3,033億円は前年比13.7%増となっており、増収分である366億円のうちインバウンドによる売上が49億円と、インバウンドによる旺盛な消費の恩恵を受けています。
新EC法施行で転売業者の国内売上が減少?
このように好調なインバウンド消費に支えられる側面がある化粧品販売ですが、中国で2019年1月に施行された新EC法の影響を懸念する声があります。 新EC法によって個人、法人を問わず海外で購入した商品を転売することが規制の対象となり、非常に厳しい罰則を伴うことになったため、転売目的で購入されていた化粧品等の国内売上が減少すると言われています。
まとめ
転売業者からの購入が中国で盛んだった理由として、偽物が流通している中国国内に対して日本で購入した商品であれば品質的に間違いのない本物が購入できる、というニーズの存在が挙げられるため、例え転売目的の購入が減少したとしても越境ECや中国国内での正規ルートでの購入等のチャネルがあれば、引き続き日本製の化粧品に対するニーズは維持できるという見方も可能です。 しかしその場合は転売から多チャネルへ消費者を誘導するために具体的なプロモーションやチャネルの整備、価格戦略の見直し等が求められることになるのではないでしょうか? 新EC法の施行からまだ1か月、今後も情勢を見守りつつ素早い対応が必要になりますね。