観光客によって京都市民の日常の足であるバスの利用が難しくなっていたり、混雑によって厳かな京都の魅力が失われ、日本人観光客の足が遠のいているのでは、という話題を紹介しましたが、観光客が増加したことによって起こるオーバーツーリズム問題は世界中の観光地で発生しています。
観光先進国におけるオーバーツーリズム対策とは?
観光先進国におけるオーバーツーリズムの対策事例を見ていきましょう。 世界的に有名な観光地の多くが深刻なオーバーツーリズムに直面しており、市民生活への影響や自然環境の破壊といった問題に頭を悩ませていますが、多くの観光地は「総量規制」、「誘導対策」の2つ方向で対策をしています。
総量規制で対策
まず、総量規制によるオーバーツーリズムへの対応から見ていきましょう。 総量規制は見て字のごとく、観光客の数を制限する、というものです。 総量規制のわかりやすい方法は入場制限です。
入場制限を行っている世界の名所
・クロアチア/ドブロブニク 4,000人/日が上限
・ギリシャ/サントリーニ島 8,000人/日が上限
・ペルー/マチュピチュ 入場時間で退出時間が決められる(最長で4時間の滞在)
このほか、ガラパゴス諸島や‘タージマハールなども入場規制を行っています。 これらのような観光名所や島のような場所は比較的入場制限をしやすいのですが、都市全体が観光客で溢れてしまっている、というようなケースではより高度な管理が求められます。
アムステルダムが実践する総量規制とは?
オランダ・アムステルダムは世界遺産にも登録されている運河や小道などで世界的にも有名な観光都市ですが、市内のホテルの利用宿泊数を見ると2006年には年間800万泊だったところが10年後の2016年には1400万泊へと大きく増加しており、人口85万人に対してオランダ政府観光局の調べによると年間で約1600万の観光客がおとずれているというバランスを欠いた状態になっています。 そこでアムステルダムが講じた総量規制は下記のようなものとなっています。
・民泊の営業日数は年間30日まで、2018年には市内中心部での民泊は全面禁止
・市内中心部でのホテル建設を禁止
・観光バスの市内への乗り入れ禁止
・観光客向けの店の出店規制(中心部)
オランダ政府観光局の調査では、そのうちアムステルダムを訪れた割合が37.8%ですので、約1600万人。これはアムステルダムの市街地人口の実に13倍に当たりますが、試算ではさらにこの先、観光客の増加が予測されています。 このように見るとかなり思い切った対策を取っているように見えますが、対策を超える観光客の増加が進行中であり、さらなる対策が求められています。
アムステルダムの誘導対策
オーバーツーリズムのもう一つの対策が観光客の分散です。ここでは観光客が特定の場所に集中してしまわないように誘導を行っている事例をアムステルダムから見てみましょう。
・大型クルーズ船のターミナルを市内中央の駅付近から北海運河の沿岸に移設
・アムステルダムから30㎞の位置にあるビーチをアムステルダム・ビーチに改称、市内の交通カードが使えるエリアとすることで送客を促す
・特典が得られるアプリで観光客の動向を入手
・分析を行い、密集が予想される場合には周辺スポットを紹介する取り組みを開始
いずれも観光客が集中しがちな市内中心部以外に目を向けさせるという施策になっていますが、
まとめ
増えすぎた観光客によって住民の生活が脅かされるオーバーツーリズムはイタリアのベネチア、イギリスのロンドン、スペインのバルセロナ等でも発生しておりますが、年間5000万人の観光客が訪れる京都も観光公害に悩まされています。 インバウンド獲得に目が行きがちな昨今ですが、観光産業の永続的な発展を目指すのであれば、オーバーツーリズムと向き合い、平行して対策を進めていく必要があります。 今回紹介した総量規制や誘導策はいずれも観光収入の減少につながる側面も持ち合わせていますので、どのようにしてバランスを取るかを世界の前例から学び、実践する時期ではないでしょうか?