温泉に浸かってゆっくり体を休める、というのは日本人にとっても旅の醍醐味の一つですが、インバウンドにとっても同様に温泉は魅力的な存在のようです。
そんな中、日本式の温泉施設が海外で好調です。今回はアジア圏での進出事例から日本式温泉が人気の背景を見ていきましょう。
日本式温泉の進出事例
①極楽湯ホールディングスは中国で好調
極楽湯ホールディングスは中国進出を積極的に推進しており、上海や武漢、青島などでも直営、フランチャイズで合計8店舗を運営していますが、2019年1月末に中国東北部の吉林省長春に新しい店舗をオープンしました。 長春の施設は1万4500㎡、サウナや岩盤浴などがあるほか休憩場やレストランなどを備えたスーパー銭湯形態です。 入場料は1人あたり108元(約1800円)という設定で、現地の物価からすると安くはありませんが上海や武漢などの既存店舗は多くの人々で賑わいを見せており、年内中に上海や蘇州などで6店舗を新設し、計14店舗に増やす計画があるほどの人気獲得に成功しています。
②星野リゾートは台湾に温泉リゾートで進出
星野リゾートは2019年夏に温泉リゾート施設で台湾へ進出を計画しています。台湾中部の台中市の温泉地がロケーションで、各客室に源泉掛け流しの半露天風呂を備えた形態で、全50室の温泉リゾート地となる予定ですが、山に囲まれた立地を生かし、敷地内にプールや散策路を設けるなど、ラグジュアリーな雰囲気の中でリラックスすることができそうです。 そのほか、ロシアでは札幌市のスーパー銭湯大手「丸新岩寺」と、同社の現地法人「ほのかサハリン」の合同プロジェクトが進行中で、手がける延べ7400㎡の面積に温泉やレストラン、ゲームコーナー等のレジャー施設を併設する大型複合リゾートになる予定がある他、シンガポールでは現地日系企業がオープンした湯の森温泉&スパが人気を博しています。
③海外企業も温泉施設を各地に開発中
その他、日本の温泉に商機を見出している現地企業も少なくありません。 中国で温泉の開発コンサルティングを手がけている重慶箱根温泉産業発展集団は日本の温泉の魅力を伝えるべく創業された企業で、中国各地に6カ所の大規模な温泉施設を運営しています。 また、台湾では山形県と提携した日本風の設計を取り入れた温泉付きのホテル、山形閣がオープンしている他、政府が開発支援のために補助金を出した温泉事業者は10~15年に125にもなっており、温泉人気の高まりがあることがわかります。
アンケートで見える日本の温泉人気
日本交通公社が2015年に行ったアジア8地域(韓国・中国・台湾・香港・タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア)を対象としたインバウンドの意向調査によると、訪日経験者が日本を旅行先に選んだ理由として「温泉に入ってみたい」という回答は初訪日だと全体で40%、訪日リピーターだと43%と日本食に次いで訪日の動機として2位に入っていることがわかります。 また、国別に見ると中国が56%、タイが54%と温泉への関心が訪日の動機として大きな割合を占めています。 このように温泉をきっかけに訪日したインバウンドが滞在中に温泉を楽しみ、その魅力を認識し、帰国後にも温泉を楽しみたい、という流れが現地での温泉施設の活況の一翼を担っているということが言えそうです。
まとめ
このように日本の温泉の需要は海外で高まりを見せていますが、国内の温泉事業者にとっても海外に市場を求めるきっかけの一つになりそうです。 また、アンケートを通して日本の観光資源として最もアピールしやすいのが温泉、という構図も同時に見えてきます。地方だからこそ味わえる温泉の魅力、という見せ方ができれば地方のインバウンド誘致のフックとして効果的な役割を果たしてくれそうです。