インバウンド増加に伴い対応を必要となっているのが医療機関です。
言語の違いや風習の違いなど、治療をスムーズに行うための体制作りのほか、公的な医療保険に加入していない外国人患者に費用を請求し、未払いを防ぐためにどうすれば良いのか、といった不安を抱える医療機関が多いはずです。
そこで厚生労働省は「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を4月11日に好評しました。
マニュアルの内容は?
マニュアルは「医療機関における外国人患者受入れの在り方に関する研究班」が作成を担当、厚労省の「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」に寄せられた意見も取り入れた内容になっています。 医療機関のインバウンド対応、というと医療費未払い問題に焦点がいってしまいがちですが、このマニュアルは支払いに関することだけではなく、通訳他姓、宗教や習慣への対応、感染症対策など広い範囲をカバーした作りになっています。 今回は実際に実効性のある対策が求められている医療費未払い問題に関するマニュアルでの取り扱われ方を確認していきましょう。
海外旅行保険をどう活用するか?
海外旅行保険は医療費の支払いの際に活用したい仕組みですが、マニュアルでは大きく二つの方式があることに触れ、それぞれのポイントを説明しています。
①Pay & Claim方式
Pay & Claim方式は、患者が医療機関に費用を自分で支払い、後日保険会社から患者に保険金が支払われる方式です。この方式では、患者自身に費用を支払ってもらう必要があるため、医療費設定と事前説明をしっかり行うことが重要となります。
②キャッシュレス方式
キャッシュレス方式の場合、患者は費用を支払いする必要がなく、保険会社から医療機関へ支払いが行われますが、患者から保険会社への事前確認や保険の給付対象となっていない部分があるという点が注意点です。
海外旅行保険まとめ
いずれにしても患者が海外旅行保険に加入しているかどうかを確認した上で、保健のタイプや保険を適用する上での条件などをクリアにすることがスムーズな保険の運用の前提となります。 外国人患者に対し、「保険に加入しているか」「保険のタイプはどのようなものか」「保険会社に受診の確認をしているか」を確かめるとともに、こうした点に関する知識を医療機関サイドで一定程度保有・共有しておく必要があるでしょう。
医療費の適切な設定と事前説明の重要性
外国人の医療費は保険の適用されない自由診療となるため、一般医療法人などでは自由に価格を設定することができますが、現在取りまとめが進められており、近々掲載が予定されています。 また、医療費の未払いを防止する上で事前の医療費等に関する説明が重要であるとされ、治療を開始する前に疾病の名称や治療の内容と費用を説明し、患者の了承を得ることが重要です。このような事前の説明と了承を怠ると聞いていない、払わない、といったケースになる可能性があります。
まとめ
過去記事でも医療機関のインバウンド対応について何度か触れていますが、2015年の調査によるとインバウンドや在留外国人に対して「未収金がある」と全国1300の救急病院のうち、486病院が回答しており、インバウンドで旅行保険に加入している数が70%程度で、残りの30%は保険に入っていないことが原因の一つと考えられています。 今回のマニュアルを活用し、インバウンドにとって訪日中に医療機関を利用しやすい環境にすることはリピーターの獲得などに繋がりますが、医療機関がインバウンドを受け入れた結果、不利益を被ることのないような仕組み作りも必要ではないでしょうか?