京都は日本屈指の観光地です。2013年以降、訪日外国人客(インバウンド客)が増加し、古都京都にもインバウンド客増加の波が訪れていました。日本国内からの観光客に加えて外国人観光客も多いことから、京都市内の主要観光地には観光客が集中し、観光地そのものや観光地へ向かうための公共交通機関が混雑することが多く見受けられました。そのため観光客の数は増え続けていたものの、混雑が原因で満足度の低下が著しく、リピーターが減少することが懸念されていました。
そんな中、京都府は主要観光地にデジタルサイネージの設置を計画し、周遊観光を促すことにより観光客を京都府域へと分散させ、主要観光地の混雑緩和を狙っていました。
このデジタルサイネージのコンテンツ開発に参画した弊社担当者上治にこれらの対策にいたった経緯と問題解決のための提案について聞きました。
抱えていた課題
- 国内からの京都への観光客増加に加え、インバウンド客の急激な増加により主要観光所が集まる京都市に観光客が集中
- 京都市内の観光地や公共交通機関の混雑が激化
- 観光客増加の一方で混雑による観光客の満足度が低下
- インバウンド客は増えているものの、多言語対応が可能な人材確保や新たな観光案内所の設置が困難
導入の目的
- 京都府域への周遊観光を促すような観光情報や各地の混雑状況をリアルタイムで閲覧できるような開発することで、京都市内の混雑回避と観光満足度の向上
- 限られたスペース、人材を活用したインバウンド客の対応
課題解決に向けた取り組み
Q:増加する観光客に対応するためには、どうすれば良いのでしょうか?
A:京都府内の観光情報がリアルタイムで見れるようなコンテンツを用意し、京都府内全域への周遊観光を促進することが必要だと考えました。
具体的には、京都駅などの主要駅に設置されたサイネージにライブカメラで映された各観光地の様子を配信し、混雑具合やその場所の様子がリアルタイムで確認できるようなコンテンツです。
また、最近はSNSを利用される方がたくさんいらっしゃるので、対応している京都府内10箇所のエリアでSNSに新しく投稿されたリアルタイムな情報を収集し、サイネージに掲載しています。
これによって観光案内所のように予め用意されたコンテンツだけでなく、観光客がリアルタイムで更新している観光情報を見ることができるため、別の場所からでも「行ってみたい」と思わせるコンテンツ発信を可能にしました。
また、京都府のサイトと連携させることにより手動で更新しなくても京都府内のイベント情報や、観光中に気になる天気の情報や災害時の警報なども表示できるようになっています。
既存の枠にとらわれない発想力
Q:目新しい取り組みとして考えられていることはなんですか?
A:バーチャルコンシェルジュの導入ですね。
同機能の導入により、多言語対応可能な弊社通訳スタッフをコンシェルジュとして常駐させ、テレビ電話のようにサイネージを通じての遠隔対応を可能にし、京都観光についての相談や質問がFace to faceでできるようになりました。
今までサイネージが設置されていても、情報発信のみにしか使われておらず、このような活用法は国内で見ても初の試みでした。
Q:観光案内所ではなくデジタルサイネージを導入するメリットは?
A:まず観光案内所を設置するためには大きなスペースの確保が必要です。また、その観光案内所に常駐するスタッフの確保、さらに多言語での対応が可能な人材となるとさらなるコストがかかってしまいます。各観光地に観光案内所を設置する代わりにデジタルサイネージを設置することにより、デジタルサイネージ1台分のスペースさえあれば市内のオフィスから京都府内各地にあるデジタルサイネージにつないで対応が可能となります。また観光案内所でのコンテンツの更新にはチラシやポスターになり、印刷が必要なために時間とコストが余分にかかりますが、デジタルサイネージなら、データを更新するだけなので時間もコストも削減できる効果が期待できます。
導入効果
- 主要観光地近くの駅などに設置することで京都府として府内で積極的な情報発信ができるプラットフォームの設置に成功
- 観光案内所は迅速で頻繁な最新情報の発信や更新が難しいが、観光客に必要なリアルタイムの情報発信を実現
- サイネージで取得できるデータの活用
- 利用者を性別や年齢で分け、どのようなコンテンツを閲覧したかをデータ化
- ユーザーニーズを把握し、情報発信の参考にできるデータの取得
- バーチャルコンシェルジュで対応した観光客の困りごとなどを集計し、コンテンツ開発の参考に
- コンシェルジュの利用者は月々300件以上
- 月間最大タッチ数10万回以上
これまでの経験を活かして
Q:アドリンクだからできたこととは?
A:弊社は、2013年というインバウンドブームの早い段階から観光案内紙やYouTubeでの動画作成など観光案内のコンテンツを多言語で制作していた実績があり、インバウンド客に好まれるコンテンツの提案ができたのだと思います。また、このデジタルサイネージのプロジェクトに参画した2015年には大丸京都店や東映太秦映画村といった京都の大規模商業施設で多言語対応のインフォメーションカウンターの運営を開始しており、コンシェルジュサービスを開始するにあたって、日本語、英語、中国語などの言語を通訳可能なスタッフを多く雇用していたため、多言語での観光客対応に長けたスタッフでコンシェルジュサービスを運用することができました。
観光案内の情報力、コンテンツ開発力、多言語での通訳、接客力を備えた弊社だからこそ実現できた業務ではないかと思っています。