去年の3月から言われ始めた「爆買い終了」。それに続いて中国人の消費思考が「モノからコト」に移行したと色んなメディアで報道がありました。しかし実際はどうだったのか? ようやく2016年度のデータが出揃ってきたので検証してみようと思います。
爆買いについて
なぜ爆買いは起こったのか?
そもそも爆買いはなぜ起こったのか? 大きな要因は3つあります。
- 「為替レートが元高・円安になっていること」
- 「日本の高品質・高性能の商品を求めていること」
- 「関税の部分で中国で買うよりも日本で買って帰った方が安いこと」
この3つです。これによりブローカーが日本各地で爆買いをしていました。個数制限無視で大量の商品を買っていくブローカーが日本中のあちこちで見られました。
なぜ爆買いは収束したのか?
爆買いが起こった理由の反対のことが起きたのが大きな理由です。
- 「為替レートが元安・円高になっていること」
- 「嗜好品の関税が大幅に上がったこと」
この2つが主な理由です。2016年4月から中国政府は高級嗜好品の関税を大幅に引き上げました。例えば、高級時計に関しては30%から60%へと上昇しています。単純に税金額が2倍になったら買わないですよね。日本でも消費税が5%から8%に上がった時に消費が落ちたのは記憶に新しいですよね。元安・円高ですが2015年よりも17.1%も円高になっています。円で考えると100円で買えたものが117円に値上げされるようなものです。これによって日本に来て、物を買う必要がなくなったのが爆買いが収束した理由です。これ以降ブローカーは鳴りを潜め、ほとんど見ることはなくなりました。
訪日中国人の動向
訪日中国人旅行者数や旅行消費額
国土交通省観光庁【訪日外国人消費動向調査】平成28年年間値(速報)
訪日中国人旅行者数が前年比27.6%増加し、637万人になったと同時に旅行消費額も前年比4.1%増加しており、訪日中国人の旅行消費額1兆4574億円となっています。旅行者数の伸びに比べて、旅行消費額の伸び率はかなり微妙なところですが、関税と為替相場を考えると悪くはない数値です。為替相場次第ではありますが、今後も増加していくと考えられます。
1人当たりの訪日中国人の旅行支出
国土交通省観光庁【訪日外国人消費動向調査】平成28年年間値(速報)
1人当たりの旅行支出は前年に比べて、18.4%も減少してしまったため231,504円で、オーストラリアの246,866円に次ぐに2番目になっています。ただ他の国も韓国70,281円(6.5%減)、台湾125,854円(11.1%減)で、全国籍でも11.5%も減少しています。また、中国人の買い物代は他の国よりも2倍高い122,895円となっています。旅行支出の内訳としては、ショッピングの指数は確かに下がってはいますが、娯楽やサービスも同様に下がっています。上がっているのは宿泊費、飲食費、交通費です。2016年初期から中国人の消費傾向が「モノからコト」とよく言われますが、少なくとも平成28年度のデータを見る限りではまだ移行していないように見えます。もし「モノからコト」というのであれば、娯楽やサービスの指数が上がっていなければおかしいですよね。
越境ECの台頭
越境ECの存在も大きいです。そのうち上がるでしょうが、関税も日本で購入して持ち帰るよりもかからないため、凄まじい成長率です。2015年の爆買いが一番盛り上がっていた時の買い物代が8093億円ですが、それと比べてもほとんど変わりません(越境ECでは7956億円)。今後、為替と関税がこのままであれば、越境ECに移行していくでしょう。
*越境ECとは 消費者がインターネットを通じて海外製の商品を購入し、その商品が国外から配送されているものが「越境EC」と呼ばれている。
結論
- 関税引き上げ、為替レートの影響はあったが、旅行消費額は増加している。
- 1人当たりの買い物代は依然として中国人が1番高い。
- 越境ECでの市場規模が増加傾向にあるため、消費思考としては特に変わっていない。
総論として、消費思考が「モノからコト」に完全に移行はしていなくて、越境ECに移っただけ。 ただ、安易に何でも売れるというわけではなく、中国景気と為替などの国際情勢から読み解くことや越境ECに対応する戦略を立てる必要が出て来たということです。