外国語ガイドの実態把握調査報告書(概要)を公表しました。 2018年の通訳案内士法改正により、資格を持たない人であっても「外国語ガイド」として有償で通訳案内業務ができるようになりました。 当ブログでも通訳案内士法の緩和について何度か取り上げており、通訳案内士の資格を持たずに有償でガイドを行っている人を「通訳ガイド」として課題や利点などを扱っています。本記事では、「外国語ガイド」=「通訳ガイド」として、現状を再認識するとともに今後の課題について解説します。
通訳ガイドの現状
2018年1月に通訳案内士法が改正され、有償で通訳案内業務が出来るようになった通訳ガイドですが、かんたんに言えば資格を持たないガイドのことです。それまでは国家資格である通訳案内士の資格を持っていないと有償での通訳案内業務ができませんでしたが、法改正を受けて参入のハードルが下がった形です。
英語が中心の通訳案内士、英語以外が多い外国語ガイド
調査によると通訳ガイドの特徴として、中国語などの英語以外の言語でのガイドの割合が多いという点が挙げられます。 通訳案内士は全国的に半数以上が英語を使用しており、非英語圏からのインバウンドへの対応が課題となっていました。それに対して外国語ガイドは近畿、四国を除いたほとんどの地域で半数以上が英語以外の言語を用いていることから、課題解決になるのではと期待が集まっています。 ただし、調査では割合についての話をしていて、通訳ガイドと通訳案内士の絶対数については触れていません。エリア、言語について複数回答をしているので結果と実人数に乖離がありますが、関東について見ると通訳案内士が1218人なのに対し、通訳ガイドは696人と約半分、北陸信越を見ると通訳案内士532人に対して通訳ガイド59人とかなりの差があります。 英語以外の言語を通訳ガイドが扱えるから大丈夫、というのは少し早計かもしれません。
街歩きツアーやグルメツアーなど、ローカルカルチャーが得意な通訳ガイド
通訳案内士との比較になりますが、通訳ガイドは地元商店街をめぐる街歩きツアーやグルメツアー、ショッピングツアーなど、地元密着型のサービスを多く提供しているようです。 これはインバウンドによる地域活性化、という意味ではかなり貢献度が高いのではないでしょうか?一見地味な人々の日常をしっかりと言語対応し、ガイドすることでその歴史や成り立ちが理解でき、より深い興味を持ってもらうことができれば、その後のリピーターの獲得にも繋がりそうです。
地方での通訳ガイドの不足
この報告書でも通訳ガイド不足を問題視しています。通訳ガイドの分布が関東と近畿に集中しているのに対し、インバウンドが訪れるエリアは多岐に渡っています。これは通訳案内士についても同様で、言語が英語に偏っている、資格保有者が大都市近郊に集中しているという点は過去記事『低い合格率「通訳案内士」が規制緩和?それでも人が増えない理由』で指摘したように改善しているとは言えません。 また、同様に資格がなくても通訳ガイドが出来ることで資格を取る意味がわかりにくくなっている点や通訳ガイドの質をどう担保するか、という問題も解決していません。
まとめ
インバウンドの訪日体験に直接関わる仕事となる通訳案内士、通訳ガイドですが、今回の報告書を見た限りでは法改正によって通訳を取り巻く環境が好転したとは言えないのではないでしょうか? また、通訳業は旅行業、外食業などとともにコロナショックによって仕事が激減してしまった業界の1つであり、これまでのように右肩上がりにインバウンドが増えることを前提として事業を始める、ということを躊躇する人が増えるのが現実ではないでしょうか? 地震や台風などが頻繁に起こっている日本としては通訳業に限らず、インバウンド需要の激しい増減を加味した上で観光立国化を進めていく必要がありそうです。]]>