この特集にあたって 「コロナ禍での観光業界の具体的な状況を知りたい」 「観光に携わる方々がこの状況をどのように捉え、動いているのか?」 この記事はそのような方へ向けて書いています。
インタビュアー中井の想い
はじめまして。 私は株式会社アドリンクでインターンをしています、大学3回生の中井一希と申します。 昨今のコロナによる経済的ダメージは世界規模で深刻な状況にあります。 特に観光業においては多大な影響を受けています。 そのため多くのメディアが観光業の状況についての情報を発信していますが、その多くは被害の大きさなどが語られています。 しかしその裏では、多くの観光従事者の方が新しい事業を展開し、新しい取り組みを行っています。 そこでこの度、観光に携わる企業や事業主の皆様にコロナ禍における対策や取り組み、そしてこれからの観光についてのお考えをお伺いし、インタビュー記事を書かせて頂くこととなりました。 これから多くの観光従事者の方にお話をお聞きし、コロナに負けず果敢に挑戦しているお姿を発信していきます。 記事を読んでくださった皆様の、これからの観光業に対して前向きに捉えていただくための一助となれば幸いです。 それではまいります。
第一弾は「京の宿 綿善旅館」
(この記事は2020年7月8日の取材をもとに作成いたしました)
今回は「京の宿 綿善旅館」若おかみの小野 雅世さんにお話を伺いました! 綿善旅館さんは錦市場の近くで営業されている老舗旅館です。 通常の旅館業はもちろんのこと、定期的にイベントも開催しており、従業員一人一人が個性あふれるとても魅力的な旅館です。
綿善旅館さんのHPはこちらです↓
常日頃お客様にスペシャルな体験を提供している若おかみに、コロナ禍での状況やこれからの観光についてのお考えをお聞きしました!
1、綿善旅館さんについて
-事業内容について簡単にご説明お願いします。
『お客様の一生の思い出のお手伝い』です。 具体的な事業内容は旅館・宿泊業になります。宿泊とお食事、あとは場所のご提供が当旅館の基本となる業務です。
-綿善旅館さんは「旅館で寺小屋」や「旅館で夏祭り」など数多くのイベントを開催しており、とてもユニークだと感じました。このようなイベントを開催する意図やお考えについてお聞きしてもよろしいでしょうか。
もともと私が大事にしているのが「四方良し」という考え方で、当たり前のことなのですが、お客様も従業員も取引先さんも京都という場所・地域も全てがハッピーであることが大事だなと思っています。この思いのもと何ができるか考えたときに、その時その時の時勢を把握し考えて動くということがそれらのイベントにもつながっていると思います。 「旅館で寺子屋」は、コロナ禍で子供たちの学校で急な休校が決まり、それに困ったお母さんたちが現れたタイミングで動き出しました。まず、この状況で旅館ができる「四方良し」なことは何かと考えました。旅館として出来ることは、まずお子さんを預かる場所があるということ、次に預かったお子さんにご飯を提供できるということでした。そして、八百屋さんやお子様の預かりもされている京都の事業者さんと協力して実現いたしました。 「旅館で夏祭り」、これは京都の祇園祭がなくなったことがきっかけで開催されました。本来なら盛り上がっているこの時期に何もないよねと。京都人にしたら大きなお祭りがなくなってしまったっていう寂しさがありました。その時に、じゃあ旅館で何か盛り上げることができないかと考え企画されたのが「旅館で夏祭り」です。そして、私と従業員だけでなく、取引先さんや京の伝統産業の方々にもお声がけし、またボランティアの方々にも協力いただいて伝統産業体験などができる縁日みたいなものをやりました。そしたら多くの方々がまた開催して欲しいと言ってくださり、企画した側も参加してくださった側も非常に喜んでいただけました。
2、コロナによる影響とコロナ禍での取り組みについて
-今回のコロナ禍において、綿善旅館さんにどのような影響がでましたか。
客足に関しては、4月に入る頃には入っていた予約は全てキャンセルとなりました。また4月9日以降は緊急事態宣言などがあったことから、7月に行った「旅館で夏祭り」までは宿泊業は完全にストップしていました。
-感染拡大に対してどのような対策をしていますか。
皆様にご安心してお過ごしいただけるよう、ガイドラインを作成し感染対策を徹底しております。
詳しくは綿善旅館さんのHPで掲載されていますのでご参照ください↓
-コロナ禍においてどのように誘客されますか。
行政主導の「地元応援!京都で食べよう、泊まろうキャンペーン」に参加しております。内容としては先着15名様限定で特定のプランが半額でご利用いただけたり、板前が丹精込めて作った高級懐石料理のランチを5000円で召し上がれるプランをご用意しております。また「旅館で夏祭り」の他に、毎年行っている「天ぷらナイト」というイベントを8月に準備しております。
今年の「天ぷらナイト」の告知はこのようになっております↓
一方で、昨年まで毎日稼働率8~9割で営業していたため、丁寧に接客しているつもりでしたがやはり何かに追われている日々が続いておりました。このような雰囲気はお客様にも伝わってしまいます。そのため今はスタッフのレベルアップであったりとか、館内の備品の見直し(備品をより京都っぽいものに換える、手作りしてみるなど)といった全体の見直しに集中して力をいれていっております。
3、これからの観光について
-コロナ禍において観光業界及び宿泊業が行えることなどはありますでしょうか。
このご時世ですので、ストレスを抱えた方々が多くいらっしゃると思います。 そのような方々に対して非日常をご提供することこそ私たちができることだと考えております。 具体的には、 ①旅行に行くという非日常を皆様に味わっていただく、 ②コロナ対策を踏まえた上で安心してお泊まりしていただく、 ③思い出に残るようなスペシャルな場所を提供する、 といったものです。 宿泊業として本来やるべきことを確実にすることが、私たちが今できる最大限だと思っております。
-観光が1度リセットされた今、新たに見えてきたものはありますか。
見えてきたというよりは、前々から気になっていたけれども手がつけられなかったことを進める機会になりました。きめ細やかな接客の部分が多いのですが、具体的には、お客様によく聞かれる項目をQ&Aとしてまとめて可愛い冊子にしたらどうかなど、そういうものを全部整理しながら現在は動いています。 また、地域の方々とより仲良くなれたと感じています。6、7月頃は通常であれば修学旅行生の皆様がいらっしゃっている時期で、毎年本当に周りの方々に助けていただいておりました。そのため今回、今までの感謝の気持ちとして、お弁当などをリーズナブルなお買い求めやすい価格でご用意しました。我々は地域の方々と良い関係を築くことで「みんなの綿善さん」「近所の綿善さん」になりたいと考えております。この考えは私の宿泊業を営む原点であり、今回私たちの原点を見つめ直すことができました。 今は売上を追い求めつつ、今回発見した原点を見失わないように従業員共々営業していきたいと思っております。
中井の一言コメント
今回の取材を通して、旅館業を営む上での心構えや人と人との繋がりの大切さを学ぶことができました。また、小野さんの、そして綿善旅館の皆さんの明るく楽しい雰囲気がひしひしと伝わってきました。 小野さん、この度は取材に応じてくださり本当にありがとうございました!