近年は右肩上がりに増加を続けていたインバウンドですが、2020年の政府目標・4000万人は残念ながら達成できない状況となっています。
原因はコロナ禍ですが、それによって様々な業界が影響を受けています。今回は最も多くのインバウンドが訪れた観光地の1つ、京都の事情を見てみましょう。
コロナショック以前に弾けていた京都のお宿バブル
多くの観光客が訪れる京都には宿泊施設が必要です。2011年の段階で京都市内にある宿泊施設の数は878件でしたが、その後、爆発的に増加しています。 特に2015年からは新しい宿泊施設が次々と作られ、2020年3月末時点では3993件になっています。これは増加するインバウンド需要を見越しての投資でしたが、2019年頃から供給が過剰となってきています。
ゲストハウスを圧迫した理由
①供給過多
宿泊料金は需要と供給の関係で変動しますが、供給が過剰になった結果、値崩れする傾向が出てきます。特にゲストハウスなど簡易宿所と呼ばれる小規模・低価格帯の宿泊施設を中心に影響が大きくなり、収益性が悪化するケースが増加します。さらに地価が高騰したことによって賃料が値上がりし、経営環境はますます厳しいものになっていったのです。
②条例の締め付け
他にも京都市が定めた条例によって2020年4月からは宿泊施設の800m以内の場所に管理者の配置が義務付けられると、今後の経営は難しいと判断した事業者が相次いで廃業するという事態になっていました。
コロナショックはたしかに大きな打撃を与えていますが、京都の宿泊施設に関して言えばコロナショック以前に既に健全な軽々環境ではなくなっていた、と言えます。
アフターコロナとゲストハウスという文化
民泊の普及とともに宿泊施設の形態も多様性を帯びるようになった昨今ですが、中でもゲストハウスは単なる宿泊施設とは一線を画す部分があります。
部屋やトイレ、バスなどをゲスト同士で共有することでお互いの交流を促す、というところがゲストハウスの魅力でもあるわけですが、アフターコロナに向けて厚生労働省が発表した「新しい生活様式」にあるような人同士が身体的距離を確保して接触を減らすというような指針とは相性が悪いと言わざるをえません。
京都のゲストハウスの多くは存続をせまられる事態になっていますが、リピーターやファンたちの支持を受け、京都簡易宿所連盟はゲストハウスを支援するクラウドファンディングを立ち上げ、目標額の200万円を大幅に上回る300万円を集めることに成功しています。
まとめ
コロナショックによってリモートワークが導入されるなど、働き方や生活にも変化が起き、コロナ禍が落ち着いた後もそのような変革が求められる場面や業態が多数出てきそうですが、旅行業界もその1つであり、今回紹介したゲストハウスの事例は決して他人事ではありません。観光業界のあり方について模索しながら、アフターコロナに備えた準備をしていきましょう。