2017年に日本を訪れた外国人観光客は2,869万人に及び、過去最高を更新していますが、2018年も勢いは衰えるどころか更にハイペースで多くの外国人観光客が来日しています。2018年は3,000万人を超す外国人観光客が訪日するという見通しで、さらなる経済効果が期待できる状況に観光業界をはじめ各方面からの嬉しい悲鳴が聞こえてきています。
しかし、同時に受け入れ側の準備等に懸念される部分も多数持ち上がっています。その中の一つが熱中症対策です。
熱中症とは
熱中症は、身体の中の水分や塩分のバランスが崩れたり、体の調整機能の働きが鈍くなることによって起きる症状ですが、気温が高いことなどが原因とされています。 自覚症状として挙げられるのは、鋭い頭痛やめまい、吐き気、立ちくらみ、倦怠感などの症状ですが、暑い場所にいるのに発汗がない、皮膚が乾燥する、肌に触れると熱をもっている等の症状も熱中症の可能性があります。
どれくらいの訪日外国人が熱中症にかかるのか
訪日外国人観光客の中には日本よりも平均気温が高い国から来ている人々もいますが、日本の暑さの特徴として高温に加えて湿度が非常に高いということが言われており、熱中症の一因だと類推できます。 気象協会が2017年に行った在留外国人200人を対象とした調査によると、 熱中症を経験したことがあるという回答が7割を超えるという結果になりました。
熱中症にかかった場合のリスク
訪日観光客は毎年増加していますが、そのうち約6割がリピーターだと言われています。 まず京都、大阪、東京等を訪れた後、2回目以降の訪日で地方都市を観光する、という楽しみ方が定着しつつある中で熱中症を経験した場合はリピート訪日の意欲を大きく削ぐであろうことは想像に難くありません。 そのような大きな機会損失を回避し、外国人観光客に日本滞在を楽しんでもらうためにも熱中症の認知と対策の周知が急務となっています。
外国人への熱中症対策
熱中症に対する啓発活動をリードしているのは日本気象協会。ネットメディアとリーフレットを活用して外国人観光客に熱中症を啓蒙し、万が一の対策を周知するべく以下のような活動を始めています。
ウェブサイト「熱中症ゼロへ」で啓蒙強化
日本気象協会は熱中症対策に力をいれており、「熱中症ゼロへ」と名付けられたウェブサイトを通しての啓蒙活動を行っています。 このウェブサイトは英語版も用意されており、訪日外国人観光客にも広く熱中症についての周知を行うことで“熱中症による死者をゼロにする”という願いが込められています。
熱中症予防リーフレットを配布
訪日外国人観光客を対象とした英語版のリーフレットは、熱中症の応急処置法として「涼しい場所への移動」や「体を冷却して体温を下げる」、「水分と塩分の補給」を挙げる他、119番通報の方法などを記載し、万が一の対策の周知を目的としています。 このリーフレットの一部を切り取ると折り紙を楽しめるという仕掛けがあり、裏面に兜(かぶと)の折り方を紹介するなど、日本文化に親しみながら、熱中症と対応策について知ることができる内容になるように工夫が凝らされています。
まとめ
2020年には東京オリンピック、パラリンピックが控えており、多くの外国人観光客が訪日することが見込まれていますが、開催期間が夏ということもあり熱中症の周知と対策はもちろんのこと、日本独特の高温多湿な夏の気候についての事前周知等を積極的に行うことが必要となりそうです。