1994年には1200万人と言われたゴルフ人口はレジャー白書2017によると550万人まで減少しています。
バブル期と比較して経済の悪化によりプレイするための費用が高額なゴルフが敬遠されるようになったことが原因として考えられますが、日本は世界でも指折りのゴルフ場保有国であり、美しい景観とともにゴルフを楽しむことができるのです。
このような資源を活用し、ゴルフによるインバウンドを推進することでゴルフを軸に据えたインバウンド収益の確保とゴルフ市場の活性化を実現したいという動きが出ています。
世界のゴルフツーリズムの事例
世界有数の日本のゴルフインフラ
日本のゴルフインフラは世界でも有数ということは触れましたが、コースの数は約2,450コースでアメリカの15,620コースに次いで第2位です。
世界での滞在中のゴルフ受け入れ状況
では、滞在中に1回以上ゴルフをプレイした人=インバウンド・ゴルフ来訪者の受け入れ状況に目を向けましょう。 野村総研がまとめた資料によると1位はタイで40万人、2位オーストラリアの17.5万人、3位メキシコの17万人と続いていきますが、日本は蚊帳の外にいることになります。 ゴルフ来訪者が外国人観光客に占める割合で見てみると、タイの場合は1.61%、オーストラリアで0.69%、メキシコで0.58%となっています。
日本が世界水準になった場合の経済効果
標準的な割合を0.6%とした場合、2020年の目標とされる訪日外国人数4000万人に対して24万人のゴルフ来訪者が出来るのです。 このゴルフ来訪者24万人を元に経済への波及効果を野村総研が推計したところ、ゴルフ場での消費や宿泊費用等のゴルフ来訪者が滞在中に消費する日本国内での総消費額は1,210億円となりました。
ゴルフによるインバウンド振興の意義
このようにゴルフ来訪者の増加によって大きな経済効果が見込めますが、その範囲はゴルフ業界だけではありません。 経済効果の範囲を①ゴルフ事業者、②地域、③国の3つに大別してみてみましょう。
①ゴルフ事業者
ゴルフ場の経営改善、関連事業者の売上増(ゴルフ用品、観光ツーリズム、不動産)、新ゴルフ関連ビジネ ス市場の創出などです。
②地域
地方創生、観光・産業振興、消費増による地域経済の活性化、自治体財政への寄与(地方税、ゴルフ場利用税)
③国
新たなインバウンド戦略の創出、国内消費増による経済活性化、訪日外国人観光客数目標達成への寄与 日本のゴルフコースは外国人観光客が訪れる首都圏ではなく、地方に分散していることからもゴルフツーリズムによって地方への送客、地方創生という側面が大きく期待できるのです。
ゴルフツーリズムの推進に向けての課題
ゴルフ人口の減少
一方、ゴルフツーリズムの物理的な受け入れ先となるゴルフ場には課題が見え隠れしています。 近年のゴルフ人口の減少に伴うゴルフ場利用者数減の影響により経営が低迷しているゴルフ場が多く、プレイ環境の維持・整備等も必要となることからゴルフ場の経営改善が不可欠となっています。
認知不足・プロモーション不足
また、スポーツツーリズムによるインバウンド増というと日本国内ではサイクルツーリズム等が各地で推進されていますが、ゴルフツーリズムの概念や期待出来る潜在力についてはあまり認知・理解が進んでいないことがあり、世界へ向けたプロモーション活動等も充分に行えているとは言えません。
まとめ
2020年に控える東京オリンピックではゴルフは正式競技となっており、ゴルフツーリズム活性化のきっかけになる可能性がありますが、まずは国内の事業者が同じビジョンを共有し、戦略的にゴルフツーリズム推進を進めていく必要があることは間違いないでしょう。