インバウンドによる地方創生を牽引する存在として注目を集める日本版DMOですが、各地での取り組み状況はどのようになっているのでしょうか?
総務省が日本版DMOなど174法人を対象に行った設立段階の認識や取り組み状況についてのアンケート調査を元にして日本版DMOの現在を見てみましょう。
日本版DMOとは?
DMOとはDestination Management Organization(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の略称です。
観光庁は日本版DMOを『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』と規定しており、当該地域の観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行うことが求められます。
2018年7月末時点で日本版DMOは86件
日本版DMO法人の登録は2017年11月28日付けで41法人が登録されて以来、第2弾として2018年3月30日付けで29法人、2018年7月31日には第3弾として16法人が登録されました。 これで86件のDMO法人が日本全国に存在していることになります。
アンケートの解説
アンケート項目
アンケート調査は日本版DMOなど174法人を対象とし、2017年12月19日から2018年1月22日までを調査機関として行われました。 アンケートは以下の4つの項目に着目し、取り組みの実態や全体の傾向についてまとめられています。
(1)目指すべき地域の将来像の設定
(2)行政機関からの権限・責任の付与の在り方
(3)運営にあたっての地域住民の理解を得る取り組み
(4)ほかの観光関連団体等との連携・役割分担
アンケート項目の結果
それぞれの項目についての結果を見ていくことにしましょう。
(1)目指すべき地域の将来像の設定
日本版DMO候補法人の登録までに、「目指すべき地域の将来像(ビジョン、理念など)」を設定したか、という設問に対し、全体の91.2%とほとんどが設定したという回答をした他、法人自らが将来像を設定したというケースが66.5%を占める等、ビジョンを持った運営高い運営意欲が伺えます。
(2)行政機関からの権限・責任の付与の在り方
行政機関からの権限・責任の付与が十分であったかどうかという設問に対し、17.9%が不十分であったために事業の実施に支障をきたしたことが「ある」と回答しました。 「ない」という回答が67.9%、「わからない」が14.3%という結果から、事業への支障をきたした経験がある事業者が少数ながら存在していることがわかりました。
(3)運営にあたっての地域住民の理解を得る取り組み
外国人旅行者の受け入れについて地域住民の理解を得る取り組みを行っているかどうかですが、半数を超える53.8%が「おこなっていないが今後おこなう予定」と回答しました。「おこなっている」という回答は42.3%でした。 また、住民満足度の把握状況については、「把握していないが、今後把握する予定」が62.3%、「把握している」は22.3%という結果となり、地域との連動という意味では首をかしげたくなる数字です。 さらに、インバウンド誘致においては外国人を対象にしたプロモーション等が必要となりますが、実施するにあたって事業区域内の観光団体との合意形成を「おおむね図った」というDMO法人は全体の48.1%、「一部の団体と合意形成を図っている」としたのが22.8%、「図っていないが、今後図る予定」が27.2%という比率でした。
(4)ほかの観光関連団体等との連携・役割分担
DMO法人は事業区域がそれぞれ設定されていますが、事業区域が異なる他のDMO法人との役割分担が必要かどうかという設問に対し、75.8%と8割近くが「必要がある」と回答しました。 しかし、実際に役割分担が行われているかどうかという部分では28.5%が「おおむね明確」、27.2%が「一部明確であるが、明確でない場合もある」、「明確でない」が25.3%と、役割分担の必要性は強く認識されながらも明確な役割分担がなされているとは言い難い状況が見えてきます。
まとめ
インバウンドによる地方創生を行政主導ではなく、地域事業者自身が行っていくためにDMOの働きには大きな期待がかかっているわけですが、アンケートの結果からは設立時の大きなビジョンに対して最も肝心な地域住民や各ステークホルダーとの連携がきちんと取れていない、という印象が見て取れます。 まだ立ち上がって間もない日本版DMOですが、地域観光産業の自立と持続的発展の確立という本来の目的に向けて更なる努力が期待されています。