3,000万人の大台を突破したインバウンド数ですが、東南アジア地域からの訪日客数が増加しています。現状、国別インバウンド数は中国が1位ですが、2018年の一人あたりの旅行支出を見ると中国の22.4万円に対しシンガポールは17.2万円、ベトナムは18.8万円と、その影響力は無視できません。
そこで今回はアウンコンサルティング株式会が行った東南アジア地域の訪日トレンド調査から傾向とポイントを見ていくことにします。
東南アジア5カ国を対象とした宿泊数と検索数を調査
今回行われた調査は、東南アジア地域5カ国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピン)を対象としており、国内の観光主要都市(北海道、東京都、京都府、大阪府、沖縄県)での宿泊者数と、各道府県名のGoogleでの検索数の因果関係を分析したものです。 宿泊者数が現在の実績や知名度、検索数が将来的な期待値という見方ができると思います。
東南アジア各国の傾向とポイント
調査の対象国の中から、シンガポール、フィリピン、インドネシアの3か国について傾向を見ていきましょう。
シンガポール
2017年と2018年に沖縄県に宿泊したシンガポール人の数を比較すると、2017年の30,170人から2018年は56,350人と大幅な伸びを示している他、「OKINAWA」というキーワードでの検索数でも2017年の106,200から2018年の150,400と増加していることがわかります。
・シンガポール/沖縄 宿泊者数:56,350(+86.8%)/検索数:150,400(+42.7%)
背景には2017年11月に就航した沖縄‐シンガポールを結ぶ直行便があると思われます。
フィリピン
フィリピンについて見てみると、大阪府、京都府、沖縄県では宿泊者数の伸び率は若干減少傾向が見られるものの、検索数は大きく増加しています。
・フィリピン/大阪 宿泊者数:181,550(-5.4%)/検索数:72,800(+30.0%)
・フィリピン/京都 宿泊者数:19,560(-13.1%)/検索数:55,200(+39.0%)
・フィリピン/沖縄 宿泊者数:2,450(-6.8%)/検索数:44,100(+33.6%)
2018年3月に大阪-クラーク線(フィリピン)が就航したことで大阪を中心とした関西方面がより身近になった、ということが検索ボリュームに影響しているようです。
インドネシア
経済発展が目覚ましいインドネシアでは訪日旅行が一般の人にも手の届くところまできた、というのが関心の高さに繋がっているかもしれません。
・インドネシア/大阪 宿泊者数:183,610(-4.0%)/検索数:93,300(+17.4%)
・インドネシア/京都 宿泊者数:50,510(-10.0%)/検索数:76,800(+20.0%)
・インドネシア/沖縄 宿泊者数:1,960(-39.5%)/検索数:47,200(+18.6%)
インドネシアからも検索数を見ると日本は注目を集めていると言えますが、宿泊者数の絶対数を見るとまだこれからの印象があります。 しかし、インドネシアはなんといっても人口が2.4億人と多く、それだけ伸びしろがたくさん残っている、ということが言えます。 インドネシアにはイスラム教徒が多いため、受け入れにはハラール対応やイスラム教の慣習を考慮する必要があります。
まとめ
シンガポール、フィリピン、インドネシアの3か国とも直行便の就航が関心の高まりに影響しているようですが、これらの国から継続的に誘客しようとした場合、旅行者にポジティブな印象を持って帰国してもらえるような環境づくりやリピーター化するような魅力的な観光コンテンツの造成が欠かせません。 また、宗教的な要因をきちんと理解し、配慮しなくてはなりませんが、この点において日本は認識が不足しているように思われます。 マーケットとしてこれからの東南アジアですが、きちんとした計画のもと、開拓を進めていきましょう。