イベント概要と開催趣旨
インバウンド増に沸く日本ですが、2020年に東京オリンピックを控え、インバウンド誘致は地方創生の重要なアプローチの一つになっています。 三重県は近隣他府県からのインバウンド流入が多く、インバウンド需要が増加しています。 2016年には伊勢志摩サミットを開催し注目を集めましたが、現在はインバウンド誘致をさらに推進するための新しい流れを模索している段階と言えます。 今回は2018年2月に開催し好評だった「これからの奈良県を考えるフォーラム」の派生から、三重でも「インバウンド観光」をテーマに様々なジャンルでご活躍の講師の方々に登壇していただくことになりました。 詳しい概要はこちらです。
「これからの三重を考えるフォーラム」の3つの目的
2018年に2回に渡って開催した「これからの奈良を考えるフォーラム」は日本でも指折りの観光県・奈良県の現状やインバウンドを誘致する際に課題となる点等、また奈良県の魅力とはどこにあるのか、といった点を参加者の皆様と共に考える、という内容で大好評をいただきました。 今回はインバウンドにフォーカスし、「これからの三重のインバウンド観光を考える」をテーマに、様々なジャンルでご活躍の講師の方々に登壇していただきました。 三重県の現状やインバウンドを誘致する際に課題となる点、またそれぞれのターゲット層に向けた三重の魅力とはどこにあるのか、といった点を参加者の皆様と共に考える、というのがフォーラム開催の趣旨となっています。 フォーラム開催の3つの目的は次のようになっています。
①地域活性化の意識啓発 参加者が三重県での観光客の動向の現状について知る。
②インバウンド観光の新たな可能性を探る 参加者で地域活性の対応策について考える機会を提供。
③多種多様な結びつきを創出 県内外問わず新たな交流の輪を広げ、さらなる賑わいを創出。
①三重県全体のインバウンド対策・受け入れの現状
三重県観光
政策課 小塩 優也 氏
まず、三重県観光政策課の小塩氏が登壇、観光に関する三重県の現状について説明をいただきました。 インバウンド誘致という視点から、三重県を訪れるインバウンドの国籍別のデータを始め、受け入れ体制など、全体から見た三重でのインバウンドの現状や県としての今後の動向についてお話がありました。 訪日外国人旅行者は順調に推移し、2018年度に三重県を訪れたインバウンドは約19万3千人となっており、各種の取組の成果として捉えることができる一方で、観光消費額の伸び悩みを課題として捉える必要があると指摘、県内に観光客を留める周遊性・滞在性の向上、顧客を引き付ける多様なサービス、商品の創出につながる観光関連産業の発展が不可欠とした上で今後の取組みの必要性を参加者とともに共有しました。
②伊勢志摩でOnly One Only Hereのコンテンツづくりを目指す
伊勢志摩ツーリズム
代表取締役社長 西田 宏治 氏
続いて株式会社伊勢志摩ツーリズムで代表取締役を務める西田氏が登壇、伊勢の観光というステージの最前線に立つという立場から、客観的に見た伊勢志摩におけるインバウンド対策の課題と危機感、そして自社で展開する外国人向け体験のアプローチ方法などを講演をしていただきました。 おはらい町を歩く中、外国人観光客の少なさに危機感を感じたことが起業のきっかけとなったと語る西田氏は伊勢志摩のインバウンドに対するアプローチの問題点を
①発想が行政区分単位でブランディングが不足していること②プロダクトアウトの発想をしていて外部目線の不足③それなりに日本人観光客が来ていることによる希薄な危機感
の3点とした上で、海女、英虞湾、伊勢神宮のような観光資源を活かした自社の体験型プランの狙いなど、インバウンド誘致に向けたアプローチの事例をご紹介いただきました。 参加者は課題とされた点について頷くとともに、実践的な事例を参考にと熱心に耳を傾けていました。
③実際に三重に訪れる外国人旅行客の各国の特徴とは?
じゃらんリサーチセンター
佐藤 一喜氏
最後にリクルートグループが運営する国内最大級の旅行サイト・じゃらんのシンクタンクであるじゃらんリーチセンターの佐藤氏が登壇し、じゃらんがこれまでに蓄積したデータから三重県を落とすれるインバウンドに関する最新トレンドについて講演をしていただきました。 2018年は訪日外国人観光客は初めて3000万人の大台を超え、3119万人と過去最高を記録しました。 かつてはインバウンドが訪れる観光地はゴールデンルートがほとんどだったものの、個人旅行や訪日リピーターの増加を背景に外国人の興味はよりコアなコンテンツへ向き、地域密着型体験の需要も高まっている指摘。 その上で、国籍や特徴を把握して最適なコンテンツの開発や提供を行うことがさらなる滞在時間や飲食費などの消費の向上に繋がるというデータを元にしたお話は説得力抜群で、それを踏まえた上で伊勢志摩の特徴をどのように見せていくのか、という切り口の重要性を参加者一同は痛感した様子でした。
三重県ならではのコンテンツを!熱く盛り上がったワークショップ
三人の講師による講演では三重県の課題と可能性がそれぞれの立場から提示されましたが、それを踏まえ、国籍、年齢、性別、その他の特徴といったターゲットの特性を設定、参加者をグループにわけて三重県の観光ルート/スポットをどのように、誰にアピールするのかを話し合い、コンテンツ作りを議論しました。 それぞれのグループでは国籍、年齢層といった属性以外にも富裕層、SNS映え等の属性を捉える試みがある等、三重県ならではのコンテンツづくりに議論がヒートアップ、熱く盛り上がるワークショップとなりました。
懇親会では業種を超えた意見交換が
その後行われた懇親会では、軽食やドリンクを楽しみながら参加者同士の交流が行われました。普段接することのない異業種間の交流は新鮮な意見や視点を発見できる、と参加者は新しい人脈、繋がりづくりをしながら伊勢志摩の将来について語り合いました。
総評
奈良県に続き3度目となった三重県でのインバウンドフォーラムでしたが、3人の講師の方からそれぞれの視点からの三重県におけるインバウンド誘致についてのお話を聞くことができました。 三重県は前回、前々回の奈良県と同様に観光資源に恵まれていて、日本人の観光客が日常的に訪れるということから自分達が魅力として気づくことが出来ず、危機感を持ちにくいという点がインバウンド誘致の際にマイナスになっている、という印象です。 そのような気づきを得た後のワークショップでの盛り上がりは参加者それぞれが所属している会社や団体に持ち帰り、伊勢志摩の観光をより良いものにしていく、というエネルギーを感じることができるものでした。